2017 Fiscal Year Research-status Report
多様な体験形態の複合による多人数参加型複合現実感エンタテインメントの基盤研究
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16K00288
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大島 登志一 立命館大学, 映像学部, 教授 (40434708)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小学校での運用実験 / 国際学会での展示発表 / 力覚提示と空中像再現併用 / 人工生命行動シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ここまでの経過として,本研究計画の主旨を有効に活用し得る応用領域として,教育に重きをおいたエデュテインメントに着目し、フィジカルなミクストリアリティ・インタフェースを特長とするバーチャル生態系の捕食連鎖シミュレーション体験システムMitsuDomoe(三つ巴)の開発を行った.本課題研究に適した応用領域の開拓と事例システムの構築とを行った過年度を踏まえて,平成29年度では、MitsuDomoeを基礎として、(1)実際の教育現場での試行実験 (2)力覚フィードバックの拡張 (3)空中像視覚ディスプレイへの拡張 (4)国際学会に向けた展示実験準備を行った。 (1)教育現場での実験では,京都市立嵯峨野小学校の協力を得て,正課クラブ活動の一環として6年生理科の食物連鎖の学習と関連付け,本システムを利用する試みを行った.大画面表示とデバイス体験とを連動して運用することで,非対称な視覚ディスプレイでの体験共有を行った.4年生から6年生までの26名を対象としてワークショップを実施し,ワークブックとアンケートから学習効果を確認することができた.(2)視覚体験と併せて力覚フィードバック機能を付加するとともに,教育現場での試行結果と併せて,国内学会と国際学会SIGGRAPH ASIA 2017にて発表を行った.(3)さらに,フィジカルMRディスプレイの表示部分について再帰反射方式による空中像提示を行うこととし,先の力覚ディスプレイとの相乗効果により,体積的な対象とのインタラクションのリアリティ増強を図った.(4)ここまでの実績に基づいて,国際学会Laval Virtual 2018での展示発表と評価実験を計画し,採択を受けた.2018年4月の発表に向けて新規にデバイスを製作するとともに,新たに人工生命の行動シミュレーションを本デバイスに適するコンテンツ事例として取り上げ,発表の準備を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,公共的な場で利用される複合現実感応用システムにおいて,3種のユーザ体験レベル (1)準ユーザ (2)サブユーザ (3)メインユーザの円滑な遷移と循環,および体験の共有を実現することを目的とし,そのアプローチとして,多様な形式の視覚ディスプレイの効果的な併用のスキームを検討するとした.これまでの進捗として,教育・教養向けアプリケーションに領域を定め,捕食連鎖シミュレーションをテーマとした事例システムを開発した.本年度は,これを軸として,過年度定めた計画に沿って,まず実際の教育現場である嵯峨野小学校との連携を実現した.教育現場においては,理科の実験であれば,先のユーザ体験レベルは,器具・操作を主体的に扱う生徒から,実験の様子を観察する生徒までの範囲に具体的に対応させることができる. また過年度定めた方策に基づいて,インタフェースデバイスとしての拡張と他の派生コンテンツへの発展を実施した.すなわち,MitsuDomoeのフィジカル・ミクストリアリティ・ディスプレイをベースとして力覚フィードバックと空中像機能とを開発し,その相乗効果を期待し得るコンテンツとして人工生命の行動シミュレーションを実装した.次年度の成果となるがこれらの取り組みが評価され,国際学会Laval Virtual 2018での発表が確定している.これらにより,概ね順調に進捗していると報告する.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの実績の特長を強化することを念頭に以下のような取り組みを推進する. (1) 教育用途への集中:本研究の適用領域として教育に焦点を明確化し,引き続き初等教育機関との連携を強めて手法・実装(インタフェースデバイスとコンテンツ)の改良,運用実験と検証・改善とを行う. (2) インタフェースデバイスについては,「フィジカルMRディスプレイ」のコンセプトをベースに,特に空中像提示と力覚提示との併用と,実験器具などを利用することによってシステムにアフォーダンスを与え,体験のリアリティを増強することを進める. (3) コンテンツの改良に関しては,理科,特に生物学での応用という枠組みで進める.当該目的の範囲で汎用性の高いシミュレーション・プログラムの研究・試作と,そのシミュレーション・エンジンに基づいたコンテンツの実装を行う.シミュレーション・プログラムの基本的なロジックについては,人工生命とその集団の行動シミュレーションを対象に進めてきており,これを継続する.また,具体的なコンテンツとして実際の教育利用を前提にして検討する. (4) 成果発信について,引き続きSIGGRAPH, SIGGRPH ASIAもしくはLaval Virtualなど国際的な機会としてデモセッションでの採択を目指す.
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Causes of Carryover |
所期の予算計画においては,2018年春に開催予定の国際会議Laval Virtual 2018での研究成果発表を含めて2017年度の予算計画としていたが,当該会議の開催時期が2018年4月になったことから,予算年度を繰り越して次年度使用額が生じる形となった.しかしながら,2018年4月に開催されるLaval Virtual 2018での研究発表は確定しており,次年度初期に使用される.
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