2016 Fiscal Year Research-status Report
時系列データからの構成要素間因果関係抽出によるビル空調システム異常診断方法の確立
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16K00314
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
湯本 真樹 近畿大学, 理工学部, 准教授 (00304064)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 異常状態検知 / 測定値時系列データ / 因果関係 / ラフ集合 / 組み合わせ / ビル空調システム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題名「時系列データからの構成要素間因果関係抽出によるビル空調システム異常診断方法の確立」の研究として、平成28年度は次の項目について研究を行った。 (1)評価基準が異なる複数の評価値により組み合わせを評価する仕組みの確立:解となる組み合わせが無数に存在する場合について、評価基準が異なる複数の評価値がある場合にそれぞれの組み合わせの評価値にもとづいて組み合わせ全体を評価する評価する仕組みを確立した。 (2)ラフ集合を利用した判定者の嗜好を抽出する仕組みの確立:対象の集合をうまく特定できる範囲で情報を粗く(ラフに)することで対象の集合のほどよい記述を求める手法であるラフ集合を利用して、"Good"または"Bad"と判定した結果から判定者の嗜好(判定の傾向)を抽出する仕組みを提案した。提案方法では、"Bad"と判定した結果がもつ定性的な記号の組み合わせに対する"Good"と判定した結果がもつ定性的な記号の組み合わせの違い、ならびにその逆の記号の組み合わせの違いを求める方法により、判定者による判定の傾向を抽出することができた。 (3)測定値時系列データに対するラフ集合を利用した因果関係にもとづく異常状態検知方法の考察:上記(1)の研究成果を利用して求めたビル空調システムから観測された長期間の測定値時系列データの間に存在する因果関係にもとづいて、上記(2)の研究成果により設定したラフ集合により測定値時系列データがもつ特徴から対象システムの異常状態検知を行う方法を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は(a)組み合わせを評価する仕組みを確立し、かつ(b)ラフ集合を利用した判定の特徴を抽出する方法を確立したことにもとづいて、(c)ビル空調システムの測定値時系列データにラフ集合を適用する方法により、測定値時系列間の因果関係にもとづく異常状態検知方法を考察した。現時点ではビル空調システムの測定値時系列データがもつ因果関係より異常状態を検知するために考えられる複数の方法のうちの一つの方法を提案している段階である。提案方法によりいくつかの種類の異常状態を検知できることを確認している。しかしながらすべての種類の異常状態を検知するためには、これまでの研究成果にもとづいてラフ集合による測定値時系列データの表現方法の確立する必要がある。従来のラフ集合による測定値時系列データの表現では単純に値を定性的な記号に置き換える方法により対応していた。この方法でもある程度の異常状態を検知できることを当初の予定通り現時点までに確認している。今後は表現方法を拡張し、単に値だけでなく値の変化を定性値に取り入れる方法を提案する必要がある。さらに研究の目的である対象とするビル空調システムの異常診断を行うためには、対象とするシステムの計装図にもとづいて作成した解析モデルを利用して、これまでに確立した異常状態検知方法を拡張して異常発生個所と内容を特定できる仕組みが必要である。これまでの研究により、対象となるシステムの異常状態検知が可能であることを現時点までに確認している。今後は当初の予定通り、異常診断を行うための取り組みが求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては次の内容が考えられる。 (a)ラフ集合による測定値時系列データの表現方法の確立:これまでの取り組みにおいて、測定値時系列データからビル空調システムの動作を把握するためには、ラフ集合による測定値時系列データの表現が重要であることが判明している。特に装置により制御される温度や風量について異常状態検知を行うには、1単位時間前の値との比較をラフ集合として取り入れる必要があることが判明している。今後は、異常状態検知のために最適なラフ集合によるデータ表現方法を確立する必要がある。 (b)ビル空調システムに対する解析モデルの構築とその分析:対象とするビル空調システムの計装図にもとづいて、構成要素間の因果関係をあらわす解析モデルを構築する。このモデルを利用する方法により、これまで取り組んできた異常状態検知を異常状態の発生個所と発生内容を特定する異常診断に改良することができる。解析モデルを構築するためには(a)で求めたラフ集合による測定値時系列データの表現方法を考慮する必要がある。 (c)ビル空調システムに対する異常診断方法の確立:これまでに確立されたビル空調システムに対する異常検知方法を改良し、リアルタイムに測定された測定値時系列データから異常状態が発生した際に異常が発生した箇所とその内容まで確認できる異常診断方法を確立する。
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