2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00329
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
服部 元信 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (40293435)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宣言的記憶 / エピソード記憶 / 海馬 / 神経新生 / スパイクタイミング依存性シナプス可塑性 / 破局的忘却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では,宣言的記憶の一つであるエピソード記憶が可能な海馬モデルの構築,並びに,長期記憶の座である大脳皮質のモデルの改良を行った. エピソード記憶では,時間的な変化を有する情報の記憶を可能にすることが不可欠である.一般的なエピソードでは,同じパターンが一つの時系列情報の中に繰り返し現れたり,異なる時系列情報が同じパターンを共有したりする.したがって,エピソード記憶モデルでは,時系列の文脈に応じて,ある一つのパターンから異なる複数のパターンを想起するといった1対多の連想能力が要求されることになる.これらの機能を実現するため,本研究では,海馬の歯状回で発見されている神経新生現象と海馬の神経細胞の学習則として発見されている非対称なスパイクタイミング依存性シナプス可塑性(STDP)をモデルに採り入れた.計算機シミュレーションの結果,同じ入力が与えられた場合でも,歯状回の神経新生により海馬CA3に異なる表現が構築され,結果として1対多の連想が可能となることがわかった.また,海馬CA3の学習則として導入した非対称なSTDPにより,時系列の学習が可能になることがわかった. 一方,これまでの大脳皮質モデルでは,学習に誤差逆伝搬法を採用していた.この学習法は,情報が流れる向きとは逆向きに誤差が逆伝搬していく学習法で,工学的には非常に強力な手法ではあるが,生物学的には妥当性が低いという問題があった.また,最終的な記憶の貯蔵庫である大脳皮質では,新規な情報の学習によって古い記憶が破壊される破局的忘却を抑制する必要がある.そこで本研究では,誤差が逆伝搬しない学習法を採用し,擬似パターンによる破局的忘却の抑制が行えるかを検証した.計算機シミュレーションの結果,より生物学的に妥当な学習法を採用した場合でも,誤差逆伝搬法を用いた場合と同程度以上の忘却の抑制ができることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,国内外の学会に参加して,海馬の記憶形成に関連する最新の研究成果の調査を行った.また,海馬モデル並びに大脳皮質モデルの改良を行い,良好な結果を得ている.以上より,現在までのところほぼ計画通りに研究が進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,神経科学,神経心理学,認知科学の分野の学会等に参加をして,宣言的記憶に関する最新の研究成果の調査を行っていく.
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Research Products
(2 results)