2016 Fiscal Year Research-status Report
脳波と眼電位で操作する次世代ロボット腹腔鏡システムの構築
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16K00358
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
石井 千春 法政大学, 理工学部, 教授 (80296079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腹腔鏡下手術 / ロボット腹腔鏡 / 脳波 / 眼電位 / ハンズフリー操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、低侵襲手術の発展に伴い腹腔鏡下手術が数多く行われている。手術費用と執刀医のストレスを低減し、より円滑な腹腔鏡下手術を可能にするロボット腹腔鏡の開発需要が高まっている。そこで本研究では、執刀医の脳波と眼電位により、執刀医が自分の意思で見たい視野を得られるように直観的かつ少ない動作で操作できる次世代のロボット腹腔鏡を開発することを目的とする。脳波により安静時と集中時を識別し、眼電位により眼球運動の識別を行い、集中時に眼球の運動方向に腹腔鏡の先端が向くよう制御を行う。これにより、執刀医一人で円滑に手術を行うことが可能となる。脳波と眼電位という生体信号を用いて操作することにより、今後の遠隔手術の可能性を切り開く次世代のロボット腹腔鏡を日本から世界に向けて発信する。初年度は、以下の内容を実施した。 [a] 外科医の協力の下、手術動作時における外科医の生体信号等の測定、および腹腔鏡操作の検証を行った。 [b] 4つの電極で測定した脳波に対して周波数解析を行い、28~42 Hzのスペクトルの総和を特徴量とし、特徴ベクトルを4次元ベクトルにより定義して、安静状態と意識集中状態をサポートベクターマシーン(SVM)を用いて識別した。 [c] 測定した脳波の周波数解析を行い、複数の周波数における最大スペクトル値を特徴ベクトルとして定義し、脳波と同様にSVMにより不随意瞬目と随意瞬目を識別した。さらに、各電極で測定した眼電位の絶対平均値を特徴ベクトルとして定義し、ニューラルネットワークにより上下左右の眼球運動の識別を行った。 また、モーションセンサであるKinectを用いて、術者の顔の向きにより、ハンズフリーで腹腔鏡を操作する制御系を構築し、その有効性を検証する実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[a] 手術動作時における外科医の手技データの測定、腹腔鏡操作の検証、[b] 脳波に対する通常状態と意識集中状態のSVMによる識別、[c] 眼電位に対する随意瞬目と不随意瞬目のSVMによる識別、および上下左右の眼球運動のニューラルネットワークによる識別、いずれに関しても、初年度の研究目標を達成できている。しかしながら、[b]の脳波の識別に関しては、被験者の数が少なく、また識別精度にも改善の余地があり、今後は被験者を増やし、また測定した脳波に対して独立成分分析を行う必要があるため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、以下の内容を実施する。 [d] 腹腔鏡の動きを解析し、腹腔鏡の動きに対する操作コマンドを決定する。現時点では、腹腔鏡操作に意識を集中していると識別された時にのみ腹腔鏡の操作コマンドを受け付けるようにし、随意瞬目を連続して2回行った後に眼を動かすことにより、操作コマンドを入力することを考えている。また、操作の安全性を考慮して、随意瞬目を1回のみ行ったときは腹腔鏡ロボットを停止させる。 [e] [d]で決定した操作コマンドに対応させて、眼が動いた方向に腹腔鏡ロボットの先端が追従するような制御系を構成し、実装する。これを可能にするための腹腔鏡ロボットの運動学の解析は既に行ってある。 [f] 構築したロボット腹腔鏡システムを用いて操作実験を行う。外科医にも操作実験を行ってもらい、構築したロボット腹腔鏡システムの操作性を評価してもらう。また、従来の手動による腹腔鏡の操作も行ってもらい、操作性を比較する。得られた研究成果については随時、国内外の学会で公表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、ワイヤレス生体計測装置 PolymateMiniおよびPolymateMini AP108 MATLAB APIが割引で購入できたためである。これにより、約5万円の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、得られた研究成果を4月に香港で開催される、国際会議IBBET 2017のキーノートスピーチで公表するための旅費として使用する。
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