2017 Fiscal Year Research-status Report
閾値下共鳴を示す神経細胞から成るネットワークのダイナミクス
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16K00386
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
姜 時友 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (40415138)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 計算神経科学 / 神経回路シミュレーション / 閾値下共鳴 / STDP / シナプス可塑性 / 自己組織化 / ニューラルネットワーク / 脳型情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気生理学実験によってその存在が明らかになった、閾値下共鳴応答を示す神経細胞の、回路網内における動力学と、記憶・学習に関連したシナプス可塑性への影響を調べることが本研究の目的である。 具体的には、閾値下共鳴現象を示す神経細胞に発火ダイナミクスを加えた数理モデルを素子として回路網を構築し、それらの、周期背景入力とノイズの下での外部刺激に対する応答特性と学習特性を計算論的に調べた。 昨年度は、上記回路網において、入力刺激への学習が周波数選択的に生じることや、ノイズ強度に対して自己組織的に調律されるということを明らかにした。 上記の結果は主に、加法型スパイクタイミング依存可塑性(Spike-timing-dependent plasticity, STDP)による学習過程において見られたものであるが、本年度は、加法型STDPだけでなく、乗算型や対数型のSTDPによる回路学習を調べ、閾値下共鳴素子の学習ルール特異的な振る舞いを明らかにした。 次年度は、より現実的な状況として、抑制回路が存在する場合においても、上記現象が安定して生じるかどうかを調べる。閾値下共鳴素子から成る神経回路網の外部刺激に対する学習において、抑制回路が、従来提唱されている活動調整などの役割だけでなく、より動的な役割を担うということを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
閾値下共鳴現象を示す神経細胞から成る回路網モデルが、周期背景入力とノイズの下で、どのように外部刺激を学習するのかを、様々な可塑性ルールに対して調べた。その結果、加法性ルールにおいては、周波数選択的な回路形成やノイズに対して自動的に調律されることを示した。しかし、乗算型や対数型の可塑性ルールにおいては、その現象は弱い。この結果は、閾値下共鳴素子から成る回路網の周波数選択性やノイズ調律は、多様な可塑性ルールに対する頑強性は保持していないものの、学習ルールごとに異なる回路形成・機能を分担している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
より現実的な状況を想定し,抑制回路の存在下においても、周波数選択的な回路形成やノイズ強度に対して調律されるのかどうかを計算論的に調べる。その結果、抑制回路が存在することによって、周波数選択的な回路形成が安定して生じることや、ノイズ強度に対するチューニングカーブを制御可能かどうかを計算論的に調べる。
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