2017 Fiscal Year Research-status Report
網羅的ドッキングを用いた熱帯病関連タンパク質間相互作用解析
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16K00388
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松崎 由理 東京工業大学, 情報生命博士教育院, 特任講師 (30572888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内古閑 伸之 中央大学, 理工学部, 助教 (20397483)
黒川 裕美子 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任研究員 (10381633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質ドッキング / タンパク質間相互作用 / タンパク質間相互作用ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,網羅的タンパク質ドッキングによって対象タンパク質群から相互作用し得るペアを予測する.まず,既存手法を改良して 1. 網羅的タンパク質ドッキングによる高精度な相互作用予測手法の開発を目指す.次に,熱帯病を引きおこす寄生原虫のタンパク質,熱帯病の原因となるウイルスと宿主であるヒトのタンパク質を対象にこの手法を適用して2. 熱帯病関連タンパク質間相互作用 (Protein-protein interaction, PPI) の探索を実施する.さらに,これまで少数の既知タンパク質複合体の立体構造データから限定的に議論されてきたウイルス-宿主タンパク質間相互作用の特徴について,3. ドッキング結果に基づくウイルス-宿主タンパク質間相互作用の解析を行ない,新たな知見につなげることを目指す. 平成29年度は,T. cruzi のPPIと,デングウイルス-ヒトPPIの予測を行った.T. cruzi については,517の立体構造データを収集し,517x517 = 267,289件のドッキング計算から網羅的PPI予測を実施した.デングウイルスについては83構造,ヒトについては30,544構造を収集し,2,535,152 件のドッキング計算とPPI予測を実施した.この結果から,今後さらに検討すべき新規PPI候補を T. cruzi について39件,デングウイルス-ヒト間について28件に絞り込んだ. さらに,平成28年度に実施したヒトのタンパク質間相互作用予測について,グラフ表現を用いた予測モデルを新たに構築して実施し,予測精度の向上を図った.その結果得られた新規相互作用候補のうち一組について,免疫沈降法を用いた検証を行い,実際に結合がみられることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に課題としたタンパク質間相互作用予測手法の改善については,本年度も引き続き改良の試みを続けた.しかし,予測精度に顕著な向上は見られなかった.そこで来年度も引き続き新たな予測モデルの開発を試みる必要がある. 一方,予測の際に用いる評価値が著しく高い新規のタンパク質ペアについては,実験で相互作用を確認することができた.今後,新たに確認された相互作用の生物学的意義を議論する必要があるが,当初の計画をこえた成果である. 以上のように,計画から遅れた点もあるが,より進んだ点もあること,また,それ以外のドッキング計算については計画通りに進んでいることから,全体としてはおおむね順調な進展と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には,ドッキング結果に基づくウイルス-宿主タンパク質間相互作用の解析を目的として,既知ヒトPPIとウイルス-ヒトPPIの比較を実施する.平成29年度に予測を実施したウイルス-ヒトPPI と,既知のウイルス-ヒトPPI について,ヒト側のタンパク質の既知相互作用相手の立体構造またはドッキング結果と比較する.この比較から,ウイルスが特徴的に利用する相互作用残基パターンがあるのか,それとも宿主のPPI の特徴に似せた相互作用パターンを示すのか観察する.上記の比較で有意な結果が得られない場合には,宿主側のPPI を分類(結合時間の長さや結合定数,または機能による分類) した上で再度比較を行なう. タンパク質間相互作用予測手法については,現時点でも実用に足りる精度は出ているものの,さらに精度向上の試みを続ける.具体的には,既知のタンパク質間相互作用面を原子レベルのグラフ構造として表現し,3次元画像解析で用いられる特徴解析と組み合わせて予測を行うことを検討している. さらに,前年度までに予測した新規PPI候補群について,配列類似性や相互作用面の立体構造の類似性などを用いた他手法での評価や,パスウェイ上での位置などから,生物学的な見地で検証する意義のある候補を絞り込み,1から2件について実験で相互作用の有無を検証する.
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Causes of Carryover |
研究分担者の予定していた国際学会参加が本務の都合で不可能となり、やむを得ず1件キャンセルとした。予定していた発表は、次年度に他学会で実施することとした。
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Research Products
(6 results)