2017 Fiscal Year Research-status Report
情報統合におけるアセチルコリン効果による学習メカニズム
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16K00405
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
杉崎 えり子 玉川大学, 脳科学研究所, 特別研究員 (20714059)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海馬 / 歯状回 / STDP / 空間情報 / 非空間情報 / アセチルコリン |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬歯状回における空間情報と非空間情報の情報統合学習に集中・注意がどのような効果をもたらすか明らかにするために、今年度はアセチルコリン受容体(AChR)が各入力情報に与える効果の解明に取り組み始めた。 まず、昨年度に引き続き実験回数を増やすため、空間情報が入力される内側嗅内野から伸びる内側貫通路(MPP)と細胞体からスパイクタイミング依存可塑性(STDP)誘導刺激を入力したところ、顆粒細胞で長期増強(LTP)が誘導された。次に、アセチルコリン(エゼリン投与)を作用させたところ、強いLTPが誘導された。一方、非空間情報入力である外側貫通路(LPP)に同様なSTDP刺激を入力したところ、長期抑圧(LTD)が誘導され、アセチルコリンの作用が働くと、STDPが見られなくなった。通常時(コントロール条件)においてAChRをブロックしたところ(メカミラミンとアトロピン投与)MPPで弱いLTPが観測されたことから、MPP刺激はアセチルコリン放出を誘導していることが示唆できた。次に、顆粒細胞にある各AChRの役割を見るためにニコチンAChRをブロック(メカミラミン投与)しムスカリンAChRのみを活性化させたところ、LTDとなる傾向が見られた。 これらの結果から、アセチルコリンが作用すると、LTPは強化され、LTDはLTP方向に変化することが分かった。また、顆粒細胞にあるムスカリンAChRがSTDPに与える効果は薄い傾向にあり、ニコチンAChRがLTPの強化に大きく作用しているのではないかと推測できる。本年度の研究から、歯状回の顆粒細胞に集中・注意が働くと記憶が強化され、そのメカニズムは顆粒細胞にあるニコチンAChRが関与し、ムスカリンAChRも寄与していることが示唆できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精度を上げるために各条件での実験回数を増やしたことや、MPP刺激がコリン作動性ニューロンに作用しているかの確認を行って環境条件の明確化を図ったため、多少の時間を要した。しかし、各AChRのタイプ別による検証が進んでいることから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
LPPにおいても同様に、各AChRのSTDPへの効果を検証する。また、アセチルコリン作用下でMPPとLPPに生体条件に近い刺激パターンを同時に入力し、そこで得られる応答と個々の刺激による応答の加算を比較し、空間情報と非空間情報の統合時における集中・注意の効果を検証する。
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Causes of Carryover |
当初ラットの購入を考えていたが、他実験と共有して使用することができたため、次年度の使用額が生じた。 実験で使用する薬品やデータ解析する際に必要となるソフト等の購入を計画している。
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