2017 Fiscal Year Research-status Report
シグナル伝達系の挙動に基づく神経系・免疫系の調節機構のシミュレーション法の確立
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16K00408
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
山田 訓 岡山理科大学, 工学部, 教授 (20393506)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / ゲート形成 / コンピュータシミュレーション / 血管内皮細胞 / NFkB / IL-6 / Th17 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経系と免疫系による体内調節の分子メカニズムの解明が必要である。北海道大学の村上教授は、自律神経が活動すると末端から放出されるノルアドレナリンが第五腰椎近傍の血管内皮細胞に作用して、免疫細胞が中枢神経に侵入するゲートになることを見出した。シグナル伝達系パスウエイの挙動に基づく臓器細胞の挙動の神経系と免疫系による調節機構のモデル化の第一段階として、血液脳関門のゲート形成のモデル化に取り組んだ。今回のモデルでは、第五腰椎に近接の血管内皮細胞内で、NFkBの経路とJAK/STATの経路を計算することによって炎症アンプをモデル化した。炎症アンプの挙動の計算とともに、その周辺のサイトカイン濃度やTh17細胞の挙動を計算するモデルを構築した。昨年度のモデルではノルアドレナリンで刺激していたが、今年度は自律神経の活動電位列によるシナプス部におけるノルアドレナリン濃度変化をモデル化し、自律神経の発火パターンで刺激するモデルを構築した。この際、シナプス部でのタイムスケールとゲートウエイ形成のタイムスケールが異なるので、シナプス部での変化を計算した上で、時間平均を求めてゲートウエイ形成のモデルを計算するシステムを開発した。血管内皮細胞の内側においてIL-6が蓄積され、炎症アンプが本格的に活性化するモデルを構築した。侵入したTh17細胞と神経系との相互作用はモデル化していない。通常時の自律神経の発火頻度より高い発火頻度になるとTh17細胞の侵入量が増加することを見出した。さらに、抑制性タンパク質であるSOCSが働かないF759細胞と比較すると、ゲート形成が起こる条件は同じで、形成後に侵入するTh17細胞が多くなることを見出した。導入する免疫細胞の濃度依存性を計算し、導入する細胞数に侵入する細胞数が比例することを見出した。ゲート形成のモデル化に関し、日本分子生物学会と日本免疫学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫系と神経系の相互作用とその調節メカニズムを解明することが多くの疾患の発症メカニズムを理解する上で重要である。今年度は自律神経の活動によるノルアドレナリン濃度変化のモデル化を行い、自律神経の発火頻度依存性を検討できるモデルを構築した。侵入した免疫細胞による神経系への影響はモデル化できていないが、免疫細胞が放出する分子によるシナプス伝達やシグナル伝達系の変化をモデル化すればよいので、この部分の構築は容易であり、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲート形成におけるwild-typeとF759マウスとの違いをについて、北海道大学村上正晃教授と連携し、実験結果とモデルの結果を比較し、実験結果と一致するようにモデルの改良を行う。今回のモデルに侵入した免疫細胞が放出する分子の神経細胞に対する影響のモデルを追加し、ゲート形成全体の調節機構のモデル化を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、スケジュールが合わず、国際学会での発表ができなかったので、旅費の支出が少なくなった。 国際学会での発表を行い、旅費を多く使用する。
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Research Products
(2 results)