2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞の状態を表現する確率モデルの構築と細胞核の動態解析への応用
Project/Area Number |
16K00414
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
遠里 由佳子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (80346171)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 表現型解析 / データ駆動型解析 / 時系列データ / バイオインフォマティクス / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、公共データベースに公開されている線虫のRNAi胚や野生胚の大規模かつ高次元な2次元タイムラプス顕微鏡画像(1動画像は1細胞から4細胞期までの胚発生が観測され5秒間隔の約600タイムポイントからなる)から、画像処理により得た時空間定量データ(野生胚:N=1, RNAi胚:N=1579, 549遺伝子)を用いる。そして、遺伝子の機能が抑制されたことて生じる形態や動きなどの表現型の時間変化と遺伝子の関係を定量的に評価するデータ駆動型解析の一手法の確立を目指す。平成28年度は研究計画の初年度であるため、時空間定量データを時系列データ変換する際の特徴選択を検討から開始した。具体的には、1野生胚と、ランダムに選んだ5 種類のRNAi胚に対応するタイムラプス顕微鏡画像から、細胞核の輪郭を手作業で選択することで新たに定量データを作成した。新たに作成した定量データと画像処理により得ている定量データの核領域を比較した結果、細胞核のサイズが比較的小さい4細胞期では、細胞核が核領域として検出できない場合があることが明らかとなった。さらに、基本的な特徴量として、細胞核の重心のずれと面積の違いの2種類を選び、定量的に評価した結果、細胞核の重心は、面積と比べ頑強な特徴抽出であることが判明した。そこで、1細胞期の核領域の重心を用いた解析に着手し、胚領域の輪郭と核領域の重心を元に、前後軸上の核領域の位置を算出することで、核の移動速度の時系列データを抽出した。さらに、時系列データに含まれるノイズや外れ値への対策として移動平均を適用した。移動平均を適用する前と後の時系列データから各アトラクタを構成することで、移動平均を適用することで時系列データの解析精度が向上することを確認した。移動平均を適用した時系列データに対し、単変量の確率モデルを隠れマルコフモデル(HMM)で構築する方法をGHMMで模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「次年度使用額が生じた理由と使用計画」で詳しく述べているように、平成28年10月に追加交付されかつ、平成29年3月末に所属していた機関を転出することとなったため、当初計画していた国内外での学会での口頭発表やポスター発表が実地できていない。しかしながら、平成28年度課題は「時空間定量データから1時系列データを作成する方法と、1時系列データから単変量の確率モデルを構築する方法を検討すること」であった。この課題に対して、ランダムサンプリングしたデータを対象に、データの特徴選択法や前処理法の解析や評価を実地することで、時系列データの作成法を詳細に検討し、実際に、HMMのプロトタイプの構築に至っている。以上より、研究計画的には概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の大きな課題は、(1)単変量の確率モデルの評価システムの構築と、(2)単変量の確率モデルの実データへの適用、(3)多変量の確率モデルへの拡張、である。RNAi胚の2次元タイムラプス顕微鏡画像の取得に利用したPhenobankデータベース(http://www.worm.mpi-cbg.de)には、顕微鏡画像を目視で確認し得られた定性的な表現型情報がまとめられている。その情報を構築したHMMを用いた解析結果の生物学的な妥当生の検証に用いて(1)の評価システムを構築する。(2)は構築した評価システムを元に実現する。順次、(3)の課題に移行する。なお、平成28年度では、欠損値の影響を検討できていないため、その点の検討を加える。
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Causes of Carryover |
本研究計画は平成28年10月21日に追加交付という形で科研の内定通知を受けた。しかしその時点では、研究代表者は、所属していた機関で外部資金雇用されており、エフォートの問題があったため、12月からの研究計画に順延した。しかし、12月になり研究を開始しようとしていた矢先に、外部機関に内定を受け、平成29年3月末で所属していた機関を転出することとなった。そのため平成28年度に割り当てていた直接経費の全額を、平成29年度計画に移すことを決定した。以上の理由で大きな次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、転出先の機関の状況に即した形で、可能な限り早く計算機やソフトウェアを購入し、研究環境を整え、国内外の会議で口頭発表等を試みる予定である。なお当初は、計算機としてDELL PowerEdge R720というラック型の計算機を購入する予定であったが、転出先の機関では設置できるラックが見当たらないため、ディスクトップ型の計算機と当初計画より増強したNASストレージの購入に使用計画を変更する。さらに当初計画にはなかったものの研究の進行に障害が生じるといった理由から、プリンターなども追加購入する予定である。購入したハードウェア/ソフトウェア資源を用いて確率モデルの実データへの適用を実現する。
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