2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞の状態を表現する確率モデルの構築と細胞核の動態解析への応用
Project/Area Number |
16K00414
|
Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
遠里 由佳子 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (80346171)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
|
Keywords | 表現型解析 / データ駆動型解析 / 時系列データ / バイオインフォマティクス / 隠れマルコフモデル / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
公共データベースに公開されている線虫のRNAi胚や野生胚の大規模な2次元タイムラプス顕微鏡画像データから、画像処理により得た細胞核分裂胴体の時空間定量データ(野生胚:N=1, RNAi胚:対象遺伝子549種類, 1遺伝子あたり約N=3)を解析に用いる。時空間定量データから特徴抽出し、得られる時系列からHMMの構築を試みることにより、遺伝子の機能が抑制されたことて生じる形態や動きなどの表現型の時間変化と遺伝子の関係を定量的に評価するデータ駆動型解析の一手法の確立を目指している。 研究計画の3年目である平成30年度の課題は、(1) 対象を「1細胞期から2細胞期」に対象を拡大し、得られる多変量時系列データからHMMの構築の構築を試みることで、細胞期による違いを把握することと、(2) 定量データセットに含まれる複数の細胞期の動態から得られる多変量時系列データから1つのHMMを構築する方法を検討することにあった。 課題(1)に対して、野生胚の2細胞期のAB細胞に着目した。面積や円形度を基準に多変量時系列データを抽出し、細胞周期の数に相当する状態の割り当てが、階層ディリクレ混合過程を事前情報として柔軟な学習を実現する隠れマルコフモデル HDP-HMM により構築できることを確認した。 課題(2)に対しては、HMMに記述可能な形で、複数の細胞期から得られる時系列を扱う方法が大きな課題であった。1細胞期のP0細胞核は、2細胞期でABとP1細胞核に分かれ、さらに4細胞期では、AB細胞核がABaとABp細胞核に、P1がEMSとP2細胞核に分かれるため、扱うデータは基本的に、分岐のある時系列である。そこで、P0->AB->ABa、P0->AB->ABp、P0->P1->EMS、P0->P1->P2の順に連結した4本の時系列(特徴抽出により多変量となりうる)に再構成する方法を提案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題(1)の解決と、課題(2)に対する解決法の提案には至っているが、課題(2)における提案の妥当性は検証できていない。さらに、研究期間中に2回目となる所属期間の移動が決定し、それに由来する要因により、研究発表が予定どおりにはできていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題(2)で得られる時系列からHMMを構築する際に、2つの問題が想定されている。1つ目は、1細胞期として共通のP0細胞核より得られる時系列が同一であることから、それがモデルの構築に悪い影響を及ぼす可能性である。ここでは、時系列に適切なノイズの付与を考える。2つ目は、RNAi胚における検討である。HMMは時間方向に頑強なモデル構築法ではあるが、状態の過剰遷移を抑えることは難しく、RNAi胚において時系列が長くなる場合に、それを十分に自己遷移として吸収できず、間違ったモデル構築に至る可能性がある。ここでは、HDP-HSMMなどのさらなる拡張されたHMMの利用を試みたい。それらの結果をまとめ成果発表を行う。
|
Causes of Carryover |
研究発表が予定どおりにはできなかったことから、次年度使用額が生じている。補助事業期間の1年の延長を希望しており、次年度使用額は、その延長期間において得られた成果を国内外の会議で発表するためや論文誌等で発表するために用いる。
|