2016 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖立体構造アンサンブル予測のための新たな構造探索モデルの開発と応用
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16K00415
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
李 秀栄 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 上級研究員 (50390670)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | N型糖鎖 / 立体構造予測 / 分子動力学計算 / レプリカ交換法 / メタダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 成果の具体的な内容 本課題の目的は、分子動力学シミュレーション技術を用いて糖鎖の立体構造を高い精度・高い効率で予測する方法を開発することにある。平成28年度は、メタダイナミクス法とレプリカ交換法と呼ばれる二種類の拡張アンサンブル法を組み合わせた新たな手法(RSE-MTD法)を取り入れ、従来の分子動力学シミュレーションでは困難であった広範囲での糖鎖構造探索を実現した。(1) RSE-MTD法を用いて2糖類9種の計算を実施し、手法の有効性を検証した。(2)実験データに対して既存のCHARMM分子力場を評価し、量子化学計算に基づく改良を行った。 (3) 実践的な応用例として、N型分岐型混合糖鎖(9糖)の構造予測を行い良好な結果を得た。
2. 意義、重要性 (1) 糖鎖と生命科学や病気との関連性が明らかになる一方で、複雑で柔軟な糖鎖構造を特定するのは困難を極めている。本課題がうまくゆけば、学術的な意義はもちろん、疾患に関係する糖鎖の立体構造予測の結果は診断・治療の新たな技術開発へ応用可能であり波及効果は大きい。 (2) 分子動力学シミュレーションは実験、理論につぐ第3の手法として生命科学分野で広く用いられている。複雑な生体分子の立体構造アンサンブルを正しく求めることは、シミュレーションによる分子機能研究の根幹である。本課題の成果は、糖鎖に限らず、生命科学分野のシミュレーション研究に応用可能という点で学術的意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子力場の評価及びRSE-MTD法における反応座標の選定に時間を要したものの、その後の構造探索は、計算資源の利用状況が良かったこともあり、非常に順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基本的な変更はない。N型分岐型糖鎖の計算に加え、疾患関連糖鎖の応用計算を進める。具体的には、実験的な構造データ(NMRやX線部分構造)が得られているBisect糖鎖とシアル酸糖鎖の立体構造予測を実施する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していたグラフィックカードが市場に少なく入手困難となり、ファイルサーバのスペックを落としたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たなグラフィックカードが市場でており、それを購入しファイルサーバを増強を行う予定である。
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Research Products
(3 results)