2017 Fiscal Year Research-status Report
パーソナルゲノム時代におけるRNA-seqを活用したプロテオミクス解析手法の確立
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16K00416
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Research Institution | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等) |
Principal Investigator |
河野 信 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任准教授 (40470075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロテオゲノミクス / パーソナルゲノム / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで質量分析計を用いたプロテオーム研究は、得られた質量スペクトルをタンパク質のリファレンス配列データベースに対して検索して配列を決定していたため、変異を含むサンプルでの精密なペプチド同定は困難であった。特にがんでは多量の変異が蓄積していることが知られており、リファレンス配列に対してではなく、リファレンス配列に対して変異や挿入・欠失、スプライシングバリアントなどを含んだ個別のデータベース(バリアントデータベース)に対して検索を行う必要がある。このため、平成28年度にまず、次世代シーケンサより測定されたRNA-seqデータを利用して、質量スペクトルのデータから変異を含むペプチドを同定する手法を確立した。RNA-seqのデータからは配列の情報が得られるのに加えてシーケンスタグの出現数からmRNAの発現量を見積もることが可能である。また、質量分析データからもスペクトラルカウント法、emPAI法などを用いることで発現タンパク質の定量が可能である。そこで平成29年度には、RNA-seqから得られるmRNAの発現量と、質量スペクトルから得られるタンパク質の発現量を計算し、トランスクリプトーム階層・プロテオーム階層における定量値を比較する方法について検討を行い、単純な構造を持つタンパク質については、比較定量が可能なことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はRNA-seqから得られたmRNAの定量値とマススペクトルから得られたタンパク質の定量値を比較する方法について検討した。比較するmRNAとタンパク質が単純な構造をしている場合には比較定量可能であることを確認した。しかしながら、RNA-seqより得られたRNAタグが複数のmRNAにマッピングされてしまう場合があること、質量分析でも同様にマススペクトルから同定されたペプチドが複数のタンパク質配列にマッピングされてしまう場合があること、さらにスプライシングバリアントにより1つの遺伝子から複数のプロテオフォームが作られる場合があり、得られたペプチドがどのプロテオフォーム由来か区別できない場合があるなど、容易には比較できない場合も確認できた。また、ペプチドにリン酸化や糖鎖付加などの翻訳後修飾があった場合、マススペクトル上では異なるペプチドとして検出されるため、これを補正する必要があった。また、RNA-seq法と質量分析法の結果の解像度の違いも問題となった。RNA-seq法は測定方法にもよるが、比較的全体を網羅した結果が得られるのに対し、質量分析法では装置の解像度の問題から、たくさん発現しているタンパク質しか検出できないという問題があり、発現量の少ないタンパク質の定量については課題が残った。しかしながら、これらの問題はあったものの、今年度の目標であったRNA-seqを用いたmRNAの発現量と質量分析法を用いたタンパク質発現量の比較定量には成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は平成29年度に引き続き、RNA-seq法で得られたmRNAの定量値と質量分析法で得られたタンパク質の定量値を比較する方法について、単純な構造を持つタンパク質だけではなく、プロテオフォーム・翻訳後修飾等も考慮した比較定量が可能になるよう改良を続ける。また、本研究課題で開発した、変異を含む配列を同定する、またmRNAとタンパク質を比較定量するために開発したツールセットを公開する予定である。当初はGalaxyやDocker等のワークフローをパッケージ化して配布する予定であったが、ライセンスの問題からパッケージに組み込めないものもあるため、本研究課題で開発した個別のツールについてはGitHub等から公開し、既存のツールを含めた解析方法については、別に手順を詳述したページを用意して公開する予定である。
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Causes of Carryover |
端数が生じたため、無理せず次年度に持ち越すこととした。次年度は繰越分とあわせて計算用ハードウェアを購入予定。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Proteomics Standards Initiative: Fifteen Years of Progress and Future Work2017
Author(s)
Deutsch Eric W.、Orchard Sandra、Binz Pierre-Alain、Bittremieux Wout、Eisenacher Martin、Hermjakob Henning、Kawano Shin、Lam Henry、Mayer Gerhard、Menschaert Gerben、Perez-Riverol Yasset、Salek Reza M.、Tabb David L.、Tenzer Stefan、Vizca?no Juan Antonio、Walzer Mathias、Jones Andrew R.
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Journal Title
Journal of Proteome Research
Volume: 16
Pages: 4288~4298
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Controlling false discovery rate in accumulated public proteome dataset2017
Author(s)
Akiyasu C. Yoshizawa, Tsuyoshi Tabata, Yuki Moriya, Shin Kawano, Shujiro Okuda, Yu Watanabe, Tadashi Yamamoto, Masaki Matsumoto, Tomoyo Takami, Daiki Kobayashi, Norie Araki, Naoyuki Sugiyama, Satoshi Tanaka, Susumu Goto, and Yasushi Ishihama
Organizer
65th Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics
Int'l Joint Research
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[Presentation] OmicsDI RDF2017
Author(s)
Shin Kawano, Yasset Perez Riverol, Tobias Ternent, Yuki Moriya, Eric Deutsch, Michel Dumontier, Juan Antonio Vizcaino, Henning Hermjakob, and Susumu Goto
Organizer
16th Human Proteome Organization World Congress
Int'l Joint Research
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[Presentation] Controlling false discovery rates on large-scale proteome datasets in jPOST2017
Author(s)
Yasuhi Ishihama, Akiyasu C. Yoshizawa, Tsuyoshi Tabata, Yuki Moriya, Shin Kawano, Shujiro Okuda, Yu Watanabe, Tadashi Yamamoto, Masaki Matsumoto, Tomoyo Takami, Daiki Kobayashi, Norie Araki, Naoyuki Sugiyama, Satoshi Tanaka, and Susumu Goto
Organizer
16th Human Proteome Organization World Congress
Int'l Joint Research / Invited