2016 Fiscal Year Research-status Report
ウェブ会議システムと記憶補助機器を用いた居宅認知症者に対する服薬管理手段の開発
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16K00435
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Research Institution | Seijoh University |
Principal Investigator |
藤田 高史 星城大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10460627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能登谷 晶子 京都学園大学, 健康医療学部, 教授 (30262570)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活支援 / 服薬管理 / 認知症 / アルツハイマー病 / IT機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は記憶補助ツール「あらた」に促し機能を追加し、アルツハイマー病者に対し、服薬管理実験を行い、その効果と関連要因について検討した。対象はAD者11名(年齢87.5±5.8歳、性別男性3名、女性7名)である。方法は、以下に示す検査と服薬管理実験を実施し、検査では難聴判定のため60デシベル音量が聞こえるか否か、また認知検査としてMini-Mental State Examination (以下、MMSE)、WAB失語症検査を実施し、服薬管理実験では、服薬時間5分前に対象者の前方に「あらた」を設置し、「あらた」の音声と画像案内による対象の服薬行動をカテゴリー分類した。なお「あらた」は、タブレットパソコンに専用アプリを取り入れたものであり、服薬時間になると、実際の薬の写真と場所、服薬手順を画像と文字、音声で案内し、15秒で促しの案内を流すように設定されているものである。結果は、「あらた」を使用すると独力で服薬可能だった者(以下,適応群)は5名であり、不適応群は6名であった。不適応群の行動観察のカテゴリーでは、(1)服薬への自覚がなく「あらた」の操作を拒否した者が1名、(2)画面へのタッチが不十分で次の画面に切り替えることができない者が1名、(3)最初の画像と音声案内の後、薬を袋から取り出す行為に集中し以降の「あらた」を見ない者が4名であった。適応群と不適応群の検査結果に対しt検定で比較したところ、MMSEでは適応群得点が有意に高く、WAB失語症検査の言語系課題については両群で有意差を認めなかった。難聴と判定した者は11名中7名で、うち適応群の中では3名が該当した。両群で有意差を認めたのは、MMSEで、WAB失語症検査では有意差が認められなかったことから、言語理解面の要素を除く認知要素が「あらた」の適応に影響している可能性が考えられた。また、難聴者にも適応者がいることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「あらた」を用いた実験では概ね計画通りに遂行しているが、アルツハイマー病者に「あらた」を適応させるためには、これ自体の修正点が挙がっている。それは、最初の服薬案内画像と音声案内の後、対象者が薬を袋から取り出す行為に集中し以降の「あらた」を見ない場合に対する対策である。この改良対策に3ヶ月要するため、きわめて順調では無くおおむね順調とした。今後は、もう一つの実験としてスカイプを用いた会議ステムでの服薬管理実験を行う予定でいるが、それについては、既に平成29年4月より開始しており、順調に進展している。 研究全体でみれば、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.スマートフォンからパソコンへのSkypeのWeb会議システムとTV電話を用いた服薬管理実験 対象者である軽度アルツハイマー病者20名に対し、スマートフォンとパソコンにライブカメラとライブマイクを繋ぎ、スマートフォンを研究代表者または研究協力者が操作する.パソコンはTVモニターに接続する。Skapeを利用して薬の位置を示した写真(静止画)をスマートフォンからパソコンに流し,対象者にライブマイクを通じて説明し行動を促す。それを見た対象者が画面の要求通りに行動できるかについてWebカメラを通して検証する。 2.引き続き記憶補助ツール「あらた」を用い服薬実験 「あらた」を用いた実験は60名のデータ収集を目指している。平成29年度はそのうち半数の30名を目指す。
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Causes of Carryover |
当研究で使用している記憶支援ツール「あらた]アプリについて、本年度使用実績に基づき一部修正の必要が生じたことと、修正に約3ヶ月要することになったため、修正費用の支払いの一部を翌年度支払いとした。そのため次年度使用額が生じた。特に研究進行に影響を与えるものではない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由の項で述べたように次年度使用額は記憶支援ツール「あらた」に使用しているアプリ機能の一部修正に使用する計画である。修正機能としては文字案内のフォント大きさ設定の追加、音声案内リピート機能の時間間隔設定追加である。これらの機能を追加して、アルツハイマー病者に「あらた」を使用した服薬管理実験を行う予定である。
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