2016 Fiscal Year Research-status Report
政府情報リテラシーの日米比較と教育内容の体系化に関する研究
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16K00454
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
古賀 崇 天理大学, 人間学部, 准教授 (60390598)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政府情報 / 政府刊行物 / オープンデータ / デジタルアーカイブ / 一次資料 / 証拠的価値 / 情報的価値 / 情報の評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は研究課題についての予備的な調査を実施すると同時に、研究課題に関連するテーマで成果発表を行った。 調査としては平成29年2月に、米国ワシントン州シアトルにて、ワシントン大学などで実施した。ここでは、同大学図書館における政府情報関連業務の責任者であり、また同大学情報学大学院(iSchool)などで政府情報関連の科目も担当しているほか、著書の執筆などで米国における「図書館での政府情報サービス」にかかわる活動を主導しているひとりであるCassandra J. Hartnett氏より、多大なご協力を得た。その上で、Hartnett氏自身や、大学の各部門(法律図書館など)での政府情報アクセス活動、政府情報リテラシー教育活動の実情を確認することができた。ただし、当初予定していた、米国のiSchoolでの「政府情報リテラシー」関連科目の調査については、ウェブ上でのシラバス確認が困難な事例もあり、包括的な確認ができないでいる。 一方、成果としては「デジタルアーカイブ」に関するものが中心であるが、特に「証拠的価値」「学術研究上のルール」にのっとったデジタルアーカイブの構築・運用ができているかどうか、という問題提起を行った。これらの要素は、一次資料(primary sources)としての政府情報を読み解くリテラシー、あるいは「一次資料を用いた教育(Teaching with Primary Sources: TPS)」の素材としての政府情報、といった論点にも密接にかかわる点である。具体的には、デジタルアーカイブに関する総説的論文(レビュー)2点を、平成28年度内に上梓した。また、デジタルアーカイブにかかわる人材教育という点で国際比較を行いつつ、日本の現状に対しての問題提起を付した発表を、韓国ソウルでの国際会議で行った。その他、総説的な短い論考なども複数、刊行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「政府情報リテラシー」関連科目の調査については、ワシントン大学やシアトルのコミュニティカレッジなどにおける「ミクロ」な実情を確認できた反面、米国ないし北米全体における「マクロ」な動向把握については次年度以降に持ち越している。一方、デジタルアーカイブに関する総説的論文の執筆などを通じ、「証拠的価値」「学術研究上のルール」「一次資料を用いた教育(TPS)」といった、本研究にかかわるキーワードを発見できたのは、本研究の進展に寄与したものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、前年度のワシントン大学などでの調査を踏まえた中間報告としての発表を、4月の日本アーカイブズ学会大会にて実施済みである。また、「政府情報を含めたボーンデジタルの記録・情報に対する証拠保全」の方策としての「デジタル・フォレンジック」について、日本でも関心が高まる一方、日米間での認識・実践のギャップを明らかにする必要性を認識し、6月の記録管理学会研究大会にてこのテーマに関する発表を行い、学会誌への研究ノートの執筆も予定している。 さらに、米国での「一次資料を用いた教育(TPS)」の実情把握などを目的として、TPSに積極的にかかわる主体のひとつである米国アーキビスト協会の年次大会(7月下旬、於:オレゴン州ポートランド)への参加を計画している。 一方、米国のiSchoolでの「政府情報リテラシー」関連科目の調査については、上記の年次大会にあわせての実地調査を検討している。ただし、「研究実績の概要」に記したような包括的調査の限界もあり、前年度に調査を行ったワシントン大学などでの実践に関する追加の調査・考察(メールベースで)、あるいは数カ所に絞っての特色ある科目・教育内容の調査、といった方策も検討したい。 もうひとつ、日本での「政府情報リテラシー」教育の可能性については、現在、同志社大学大学院総合政策科学研究科図書館情報学コースで担当している「図書館情報学研究(政府情報論)」の科目を行いながら、検討を進めている。現に、日本の状況について「ウェブで公開されている情報の保存に対する懸念」(前述の「デジタル・フォレンジック」の論点とも重なる)「公文書管理への認識の低さ」「広報活動の責任主体のあいまいさ」といった論点が、授業の中で明らかとなっている。これを踏まえ、まずは「政府情報リテラシーの必要性を日本で示すための論点整理」を、何らかの形で発表につなげたい、と考えている。
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