2016 Fiscal Year Research-status Report
プレスリリースの効果的発信の要因に関する定量的調査研究
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16K00455
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
西澤 正己 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (00281585)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大学 / 研究成果 / 報道 / 学術論文 / プレスリリース |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は2015、 16年の読売及び毎日新聞記事データを購入し、データ分析を始めた。また、2016年の日経プレスリリース本文データを日経テレコン21より購入している。2016年の結果はまだ出ていないが、今年度は2005年から2015年の間に大学関連機関から発行されたプレスリリースの元になった学術論文の傾向について、投稿された学術雑誌名や分野、さらにはジャーナル・インパクトファクター(JIF)等の雑誌指標との関係等について分析を行った[1][2]。 この結果、「大学」に関係するプレスリリース14,582件の本文から、3,062件の学術雑誌タイトル、754件の国内学会名を含むプレスリリース記事を抽出した。学術雑誌、国内学会を年別に見ると、国内学会の数はさほど大きな変化は見られないが学術雑誌に関しては、2005年から2015年に17.6倍の増加がみられた。これは、大学等の機関が、著名な学術誌への掲載を積極的に、組織的にプレスリリースするようになったとみることができる。また、有力オープンアクセス誌への移行が目立ってきている。 分野別の傾向では、生物系分野が高かったが、2013年を境に、雑誌数は少ないが、総合系雑誌が逆転している。これは、Nat.Comm., Sci. Rep.等の近年の伸びも影響している。この傾向は有力総合誌や生物系雑誌への掲載がプレスリリースに繋がっていることを示している。また、物数系, 医学系, 化学系分野が中位にあるが、伸びは生物系, 総合系には及んでいない。 雑誌指標との関係では、必ずしも高いJIF、SNIPの雑誌が高頻度で現れている訳ではないが、Eigenfactorとh5-indexに関しては良い相関を示していた。この結果からは、日本の大学がプレスリリースを行う基準としてEFやh5の高い雑誌が選ばれていることがわってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プレス発表する成果と実際に報道されている研究成果の差異の要因を定量分析するためには、関係する要因を正確に見つける必要がある。このために、プレスリリースとの関連なく報道されたものを含め、新聞中の学術関連記事全体の抽出を行う必要がある。科学欄のフィーチャー記事抽出は容易であるが、ニュース記事は多種多様な面に掲載されており、新聞の記事分類だけでは抽出不可能なため、このことを進めていく必要がある。 新聞報道の要因については、大きく分けて(A)発表側の要因、(B)報道側の要因、(C)外部環境、に分けることができる。初年度の調査・分析は(B)の報道側の要因を中心に開始し、(A)に関しても取り組んでいく予定であった。 新聞中の学術関連記事全体の抽出に関しては、これまでプレスリリースと関連した報道を抽出しているので、それらの記事からキーワードを抽出し、学術成果の報告に関連するキーワードを選び、そのキーワードに対して、関連度の高い記事を抽出する試みを始めている。概ね良好な結果は得られているが、キーワードの選択や、指標の最適化を今後進める必要がある。 (A)発表側の要因、(B)の報道側の要因の分析に関しては、原論文の發表形態、学術指標との関連、分野関連に等について分析し、学会、国際会議に發表している。さらに、Altmetrics等ソーシャルメディアとの関係等についても分析を進め、学会、国際会議への發表を予定している。(c)に関してはまだ踏み込めてはいないが、概ね順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は(A)発表側の要因、 (C)外部環境、を中心に、平成28年度でできていない(B)の報道側の要因の残りの部分を進めていく。 (A) 発表側の要因としては、(1)研究等の分野、(2)基礎研究、応用研究、開発、臨床、調査等の違い、(3)共同研究や産学連携等の発表機関の構成、(4)原論文等の発表先(学術雑誌、国際会議、学会発表、特許等)、(5)プレスリリースの発表形態、(6)プレスリリースの構成・書き方等、が挙げられる。(5)に関しては日経プレスリリースに載らないプレスリリースも確認されているので、各機関のホームページ上のプレスリリースの取得(研究補助要員)も行い、比較とともに、出来るだけ多くのプレスリリースの取得に努力する。(2)(5)(6)以外はこれまでの研究で情報を抽出できているのでこれ以外の要因の把握とともに早期に分析対象のデータを得る手法は確立できるものと考える。平成29年度以降は、その他の要因を中心に進める予定である。 (C) 外部要因としては、(1)報道側の記事全体の大きさにも関連するが、他の大きな事件、事故、災害等により科学記事に割く紙面が無くなる可能性がある。また、(2)発表側の要因とも関連するが、プレスリリースの集中による影響も考えられる。さらに(3)学術賞の受賞等で社会全体が興味を持っている分野の潮流の影響も考えられる。(1)に関しては、号外の抽出、1面や社会面の特定の記事の大きさ等に注目して指標を開発していく。(2)に関しては、日経プレスリリース以外のプレスリリースの取得により集中度を測る。(3)に関しては新聞等メディアの学術記事の分野の時系列分析、学術賞の状況、外部のトレンドを扱う記事等から該当期間の傾向を指標化していく。これらの点を中心に平成29年度を進めていく。
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Causes of Carryover |
日経テレコン利用料の予定が、計画よりやや少なかったために約3万5千円ほどの余りが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は日経プレスリリース以外のプレスリリースも対象とするため、次年度の使用分に充当する。
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Research Products
(3 results)