2017 Fiscal Year Research-status Report
古典籍の保存・継承のための画像・テキストデータベースの構築と日本文化の歴史的研究
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16K00469
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
福田 智子 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (50363388)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 古典籍 / データベース / 変体仮名 / 和歌 / 香道 / 組香 / 好忠百首 / 古今六帖 |
Outline of Annual Research Achievements |
画像・テキストデータベースの構築としては、DOSHISHA UNIVERSITY OPEN CAMPUS 2017において、深川大路氏との共同研究により開発したTIRAMiS "Toolbox for Image Resource Annotation ManagIng System(ティラミス)"を用いて、文化情報学部独自企画イベント「昔の文字を計算機で『読む』」と題する、高校生とその御父母を対象とする模擬授業を行った。また、同志社大学文化情報学部の演習授業(ジョイント・リサーチ)において、半年間、TIRAMiSを用いたデータベース作成を試みた。その上で、このシステムをさらに学生の基礎教育と地域貢献に活用していくため、富士ゼロックスとの連携を強化し、研究打ち合わせの機会を複数回にわたり設けた。 日本文化の歴史的研究(1)では、筑紫平安文学会の活動として、研究代表者と南里一郎氏(研究協力者)が事務局を務め、『好忠百首全釈』(風間書房)を刊行した。これに先立って、慶應義塾大学国文学研究会において、関連する内容の研究発表を行った。また、『古今和歌六帖』出典未詳歌の注釈を行い、研究ノート3編と、関連の研究論文2編を発表した。さらに、同志社大学文化情報学部所蔵の『源氏絵所屏風言葉書』について、大学院生とともに翻刻と考察をまとめ、公表した。 また、日本文化の歴史的研究(2)の芸道香道に関しては、『香道籬之菊』の資料紹介を、矢野環氏との共著として『社会科学』に4回掲載した。『香道籬之菊』所載組香の実習も4回にわたり行った。 なお、2017年度は、共同研究全体を円滑に進めていく都合上、『好忠百首全釈』の出版に向けての作業を優先したため、画像・テキストデータベースの構築、すなわち、誰もがデータベース構築に関与することができるシステムの開発がいささか遅延していることを付記しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TIRAMiSを用いた画像・テキストデータベース構築は、これまでに基礎データの作成はほぼ終了し、データチェックの段階に入っており、学内では一部公開している。データの信憑性を担保するためには、チェックを繰り返すことが必要であるが、もとより本共同研究では、データを完成させることを目的とするというよりは、データ作成の手法を開発することにある。シチズンサイエンスの可能性を開拓するためのTIRAMiSの改良は、深川大路氏(連携研究者)を中心に作業を進めている。また、データチェックとTIRAMiSへの格納作業は、同志社大学文化情報学部3年生対象の選択必修の演習授業「ジョイント・リサーチ」において学生とともに行い、教育と研究の直結を図っている。 日本文化の歴史的研究(1)文学では、まず、筑紫平安文学会による活動として『好忠百首全釈』を刊行し、本共同研究の部会としての活動に区切りを付けることができた。初期百首における〈好忠百首〉の位置付けについて、会としてひとつの見解を示すことができたと考える。 また、『古今和歌六帖』出典未詳歌の注釈は、研究ノート3編を発表し、第六帖の注釈としては、残り数回の注釈を残すのみとなった。関連論文2編は、いずれも『古今和歌六帖』を中心として、『万葉集』や私家集、歌物語、後世の『歌枕名寄』などの広汎な和歌データの分析の上に成り立つ論である。同志社大学文化情報学部所蔵の『源氏絵所屏風言葉書』の紹介も、物語の前半部分の翻字と解題を公表するために、『源氏物語』諸本の本文データ、および絵画化された場面のデータの整理を行った。 日本文化の歴史的研究(2)芸道では、千種香の会の活動として、『香道籬之菊』所載の組香の実習と並行して、その成果を4回にわたり発表した。矢野環氏(連携研究者)の指導により、組香実習と成果発表を継続して行うことが可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
画像・テキストデータベースの構築としては、これまで通り、プログラムの改良・およびウエブ公開を、深川大路氏(連携研究者)を中心に作業を進める。2017年度中、深川氏から、画像を公開・共有するための国際的な枠組み IIIF "International Image Interoperability Framework(トリプルアイエフ)"の導入が新たに提案された。同志社大学図書館のサイト「貴重書コレクション」も、今後、IIIFを採用する予定である。そこで、本共同研究で構築している画像・テキストデータベースも、IIIFを導入して再構築していく。同志社大学所蔵の絵入り『百人一首』や源氏絵を対象とした基礎データをもとに、2018年度上半期中にTIRAMiSを用いた画像・テキストデータベースのウエブ公開を目指す。 日本文化の歴史的研究(1)文学では、筑紫平安文学会の活動は、本共同研究の最終年度を待たずして、『好忠百首全釈』を刊行することができ、主たる研究目的を達成した。そこで、研究の中心を、『古今和歌六帖』出典未詳歌の注釈、およびその関連分野に移し、研究を継続する。第六帖の出典未詳歌注釈としては、2018年度中に終えることを目指す。さらに、同志社大学文化情報学部所蔵の『源氏絵所屏風言葉書』の紹介は、物語の後半部分を残しており、これについての翻字と考察を大学院生とともに行う。また、本学部所蔵資料をいま一度確認し、一般に公開すべき作品リストを作成し、定期的な公開予定を立てて、順に作業を進める。 日本文化の歴史的研究(2)芸道では、これまで通り、矢野環氏(連携研究者)の指導のもと、千種香の会の活動として『香道籬之菊』所載の組香実習を継続して行う一方、その成果を発表していく。そして、竹幽文庫所蔵の香道伝書と文学との関係をまとめ、2020年3月を目処に単行本として刊行することを目指す。
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Causes of Carryover |
2017年度下半期から、新たに IIIFの導入を検討し、採用を決めたため、TIRAMiSの仕様の土台を大きく変更することになった。そのため、プログラミング補助の雇用が追いつかず、学生アルバイトへの謝金を、当初の計画のとおりに支出することができなかった。また、電子テキストをチェックするための学生アルバイトに対しても、業務を一部保留することとなった。その分の謝金を次年度に使用する。 また、富士ゼロックスとの連携は本格的に始動し、2017年9月には文化情報学部3年生の有志とともに富士ゼロックス京都を訪れたが、そこでさらに、研究と教育との直結、大学と企業との共創を組織的に行う必要性が浮上し、そのための検討を重ねることになった。そのため、2017年度は、横浜の共創ラボ訪問はいったん延期することとし、当初の支出計画の一部を次年度に繰り越すことになった。
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[Book] 好忠百首全釈2018
Author(s)
筑紫平安文学会
Total Pages
404
Publisher
風間書房
ISBN
978-4-7599-2226-4