2017 Fiscal Year Research-status Report
歴史学研究支援のためのシミュレーション技法の開発‐種痘導入期の施療動向を事例に-
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16K00470
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
加藤 常員 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (50202015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 洋 帝塚山大学, 文学部, 教授 (80224749)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シミュレーション / 歴史情報 / 歴史GIS / 研究支援 / 天然痘 / 種痘 / 時空間分析 / 遺伝的アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は歴史研究の場で利活用できる実践的シミュレーション技法の開発研究である.2年目に当たり,初年度の積み残し課題の推進とシミュレーションのプロトタイプシステムの設計・構築に着手した.積み残し課題であるシミュレーションモデルの有意性,有効範囲の見極めについて,当初の計画ではモデル設計に当たりまず事象の可能性とパラメータの設定を行うとしたが方針を変更した.変更は研究分担者による新史料の発掘などよりパラメータを現時点で確定させることはシミュレートを硬直化させると判断し,基盤となる対象村組分け部分に限定したモデルを構成した.構成したモデルを元にプロトタイプシステムの構築に着手した.モデルは遺伝的アルゴリズムにもとづき,遺伝子-染色体の生成,交差などの遺伝子操作,評価・適応度などで構成した.構築したプロトタイプシステムは乱数により仮想村位置を配置し,1日の巡回に掛かるコストの上限をパラメータとして設定し,1日の巡回村グループに分けるシステムである.このシステムは地理情報システムを基底としており,大枠の分割やコスト(評価・適応度)の計算等に空間情報を参照している.大枠の分割とは山地や河川,郡などの行政的要素による区割りである.この分割を実現するために旧境界や河川など線状の空間情報を生成する処理系を構築し,必要な空間情報の整備を進めた.また,シミュレーションの重要な係数情報である接種者数は,『内務省衛生局雑誌第2号』と『旧高旧領取調張』を元に推定する手法の検討を進めている. 空間情報を生成する処理系については論文にまとめ,情報処理学会論文誌に採録された.また,接種者数に関わる『旧高旧領取調帳』データについてはHGIS研究会において成果報告を行った.シミュレーションの対象となる仮説については,分担者により社会経済史学会において成果報告を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目の当初計画では,初年度にシミュレーションモデルの設計・検討を終え,モデルに従ったプロトタイプシステムを設計・構築し,試行実験を進める予定であった.しかし,シミュレーションの硬直化を避けるため,シミュレーションモデルの有意性,有効範囲の見極めとパラメータの詳細設計を先送りにし,シミュレーションの核となる対象村組分け部分のプロトタイプシステムの構築を進めた.プロトタイプシステムがシミュレートの範囲が当初計画の対象範囲一部しか構成されていない状況になっており,計画のシステムの想定した開発状況とは差異が生じている.プロタイプシステムの試行実験も限定的なものになっており,計画した実史料との整合性の検討も限定的な検討に留まった.先送りしたパラメータについては関連史料の整理・検討を行いながら詳細設計を進め,プロトタイプシステムへの組み込みを順次進めている.パラメータの設計・組み込みは試行錯誤的要素が多く,順調に進んでいるとは言い難い.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は遅れの主因である先送りしたパラメータの詳細設計・プロトタイプシステムへの導入を進め,試行実験を実施・検討し,不具合の改善,関連史料と整合が取れるように修正を行う.仮説に関連した史料精査にもとづく設定および入力データを作成し,調整されたプロタイプシステムを用いた仮説についての傍証を得るシミュレーションを実施する.シミュレーションの結果等を技術的および歴史人口学的見地からの所見をまとめ学会報告を行う. 1.シミュレーションモデルのパラメータの詳細設計:シミュレーションモデルはGISを基盤にした遺伝的アルゴリズム(GA)の枠組みで構成されている.パラメータは大きく2種類に大別される.ひとつはGAの遺伝子操作に関わるパラメータ,もうひとつはシミュレーションの対象とする仮説にまつわるパラメータである.前者の設計はほぼ終えており,後者のパラメータを史料にもとづく歴史人口学的知見から設計を行う. 2.シミュレーションを実施:対象の仮説に関連した史料等にもとづき各パラメータに設定する値(データ)の組合せを作成する.背景情報となる地図や重要な設定要素(インフラ情報)などの設定方法を決定する.その際,確からしい情報は積極的に取り入れる調整機能を設ける.また,仮説の核心である種痘の施療についてパラメータについて理論的合理性とともに便宜的整合性を加味した設定,調整する機能を開発する. 3.パラメータの値を変えながらシミュレーションを繰り返し試行する.試行錯誤的にパラメータ値を変えてシミュレーションを行うことで,さまざまな状況についての結果が得る.シミュレーションの結果およびその評価を踏まえ,不具合,改善すべき点,追加事項等が有ればモデルおよびシステム全体の改善修正を行う.
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Causes of Carryover |
[理由]パラメータの設計に当たり,シミュレーションの実施基底となる史料の新発見やそれらの整理,電子化,検討を行う必要からシミュレーションモデルのパラメータの詳細設計を先送りした.そのためシミュレーションの実施環境を見定めることが出来ず,購入を予定していたPC等のプロトタイプシステムの構築環境整備の費用の予算執行しなかったため次年度使用額が生じた. [使用計画]研究推進に当たり必要な主な経費は,プロトタイプシステムの構築のためのPC等の基盤設備の購入費用(次年度使用額を含む),プロトタイプシステムの基盤となるGISフェーズで使用するベースマップ等の空間情報に関わるデータの更新・購入および加工費用,関連史料の収集・整理およびデータベース化にかかわる費用,成果報告を行う経費としての使用を想定している.
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[Book] Presses Universitaires Francois-Rabelais de Tours2018
Author(s)
Philippe Charrier, Gaelle Clavandier, Vincent Gourdon, Catherine Rollet and Nathalie Sage Pranchere (dir.),Hiroshi KAWAGUCHI and other 21 authours
Total Pages
437
Publisher
Morts avant de naitre. La mort perinatale
ISBN
978-2-86906-659-5
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