2016 Fiscal Year Research-status Report
コンピュータエンジニアリング系科目を対象にしたアジャイル講義環境の研究
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16K00490
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
石畑 宏明 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (90468885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | elearning |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は,「論理回路」用のインタラクティブツールと並列処理のためのバッチ処理環境の構築を行った. 論理回路用では,プロトタイプ済みのクリッカブルな真理値表,状態遷移図,回路図,タイムチャートを整理・統合・問題追加を行った.30年度から担当予定の「論理回路」の講義(2年次学生)で使用する予定である.さらに,ハードウェア記述言語(HDL)で論理を記述し,論理合成で回路を設計する手法を利用できるバックエンド環境の試作を行った.論理シミュレーションおよび論理合成には,フリーの論理シミュレータIcarosとフリーの論理合成ツールABCを使用している.前述の論理回路用に開発した回路図表示やタイムチャート表示の連携を検討している.これを組み合わせれば,これまで講義中で簡単に触れるだけであった,最新の論理設計手法を体験させることが可能になる. 並列処理用では,pthread,OpenMP,MPIのバックエンドを構築した.クライアント側はソースコードエディタそのままなので,c言語用のものをそのまま利用できる.28年度の「並列・分散処理」の講義でトライアル使用を行った結果,学生によって進度の違いが大きく見られることが判明した.課題はプログラムの穴埋めなので単純なものであるが,教員側が簡単だと思っていることでも,「何か」がわからなくてできない学生が存在する.ソースコードの穴埋め部分の選択を十分検討する必要がある.次年度では課題の改良(特に穴埋め部分の選定)を行いたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロトタイプのバグフィックスに手間を取られたが,プログラムの開発は概ね順調である. 論理回路用で使用する,論理シミュレータや論理合成ツールは,本来業界で広く使用されているものを使用するのが望ましい.しかしそのようなツール(メンター社やSynopsy社などが開発している)は,非常に高価である.このため,機能・性能ともに劣るフリーの物を利用せざるを得ない.性能面はともかくとしてフリーのツールには,必須と想定される機能がないため,そのままで使用することはできない.必須の機能(回路図表示やタイムチャート表示)の開発が必要となった.回路図やタイムチャートの表示は,論理回路用に作成した回路図表示のプログラムを改造することにより,作成工数を削減することができた. 並列処理用は,比較的容易に機能追加が行えた.しかし,学生に提供する穴埋め形式の課題の作成が意外に難しいと実感した.適当に穴を作ったものでは,学生のレベルによる出来不出来の差が大きい.問題作成に十分に時間をかけ検討することが必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は,論理回路の教材のトライアルを実施する.得られたフィードバックから,機能の追加・拡張を行う.並列処理機能拡張では,昨年度に続いて,Linpack/Lapackなど,数値計算ライブラリを使用するプログラムへの対応,GPGPUを使用した並列処理への対応を行う. 並行して,他の科目への適用を進める.適用候補として,「コンピュータアーキテクチャ」を考えている.まず,クライアント側で動作する,アセンブラと機械語シミュレータの開発を行う.バックエンド側では,キャッシュシミュレータ,プロファイラ,PAPIなどの性能評価ツールへの対応を行う.この科目は,論理回路やプログラム開発関連の科目と親和性が高く,既存のプログラムを再利用できる可能性が高い. さらにクラウド対応への検討を行う.現在研究代表者の持っている設備では,100人単位の学生が並列処理のプログラムを同時に実行させ得る環境はない.そこで,大人数講義での使用に耐えうるよう,クラウド上の計算機リソースを必要に応じて利用するように改良する.研究室内のクラスタシステムと外部にあるクラウドシステムをシームレスに連携するために必要な技術の予備調査を行う.
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Causes of Carryover |
開発作業用のパソコンが予定よりも安価だったため,および取得したデータ量が少くデータ整理のための学生アルバイトを使用しなかったため使用計画との差異が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額 123,348円は,29年度購入予定の開発用パソコンの費用に充当する.このため,物品費が613,348円,旅費が430,000円,人件費・謝金が80,000円,その他が100.000円となる.
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