2018 Fiscal Year Research-status Report
コンピュータエンジニアリング系科目を対象にしたアジャイル講義環境の研究
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16K00490
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
石畑 宏明 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (90468885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | e-ラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
30年度は,コンピュータアーキテクチャ講義向けのインタラクティブツールの試行と,ディープラーニング教育への対応準備を行った.「コンピュータアーキテクチャ」講義用の機能は昨年度基本部分の開発を行っており,それを使用した講義を実施し効果を確認した. 機能拡張として,「コンピュータアーキテクチャ」用にクライアント側で動作するMIPS CPUのアセンブラと命令セットシミュレータを開発し講義で使用してみた.アセンブラは,webブラウザに,アセンブリ言語のプログラムを貼り付けると,機械語の命令列(テキスト)が表示される.命令セットシミュレータは,アセンブラが出力した機械語をコピー&ペーストでシミュレータに貼り付けると実行できるものである. 人工知能関連の技術,特にディープラーニングは昨今話題となり,学生も非常に興味を持っている.このようなプログラムを簡単に実行できるよう,今年度はバックエンド側の環境の試作を行った.プログラミング言語pythonとディープラーニングフレームワークの一つである"chainer"に対応し,学生が簡単に人工知能のプログラムを記述・実行できる環境を作成した.人工知能のトレーニングを行う上ではある程度大量のデータが必要となるが,トライアルに使用できる基本的なデータとして,まずはmnistとcifa10を取り揃えた.他の演習科目と同様に,webからpythonのコードを投入するだけで,簡単にディープラーニングの処理が体験できるようになった.学生のPCには強力なGPUが搭載されていることは少ないが,現在使用しているバックエンドには,GPUが搭載されているので,ある程度大規模なモデルでの実験も可能なことを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「コンピュータアーキテクチャ」用に開発したクライアント側で動作する,MIPS CPUのアセンブラと命令セットシミュレータでは,学生の誤操作への対応(学生が誤って無限ループのプログラムをシミュレータ上で実行させてしまうと,止められなくなる)に時間を取られたが,解決し使いやすいものが開発できた. コンピュータアーキテクチャおよび並列処理の講義での,システム試行の感想をアンケートにより収集した.その結果,「基本的なことを毎回演習で確認できよかった」と概ね好評であった.一方,マウスでの操作しか考慮していなかったせいか,「タッチパッドでの操作性が悪い」などの意見も見られた. 人工知能関連の技術対応では,基本的には並列処理用の演習システムの対応言語をpythonに変更することで実現できた.対応するフレームワークが1つしかない,利用できるデータセットが2種類しかないなど,機能面では満足の行くものではないので,今後追加開発していく必要があるが今年度の開発としては予定通りのものである.個別のプログラムでの動作確認はいくつか済んでいるので,データセットの追加,例題の追加も比較的容易に行えると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
31年度は,研究期間を1年延長し,ディプラーニング学習環境への対応を行う.30年度に試作したディプラーニング学習環境を以下のように拡張していく. (1)サンプル実装を用意する.人工知能関連では,教科書も参考資料も書籍・インターネットにかかわらず良いものがあり利用できる.画像分類のような一般的な問題では,フレームワーク中の実装例やオープンソースで公開されている実装例が学習に利用できる.しかし,このような資料にあるソースコードを学生が最初から入力して試すのは効率が悪い.またデータセットについては個別に集めてくる必要がある場合が多い.そこで,基本的な処理のサンプル実装と付随するテスト用のデータセットを集め,一通り動作できるようにする. (2) 実行環境の提供.実際に作成した機械学習のプログラムを実行するためには,GPUを搭載したマシンが不可欠である.クラウド環境を利用することも可能であるが,環境構築を行った現在の演習サーバを学生に提供する.サーバシステムの能力的には十数人程度の利用が限界であるが,トライアルとしては十分と考える. (3)データセットを拡充する.現在初学者の学習用に必ず使用されるmnist(手書き文字認識のデータセット)やcifar10(画像を10種類に分類)などは実装した.ホットな研究分野では,コンテスト用のデータセットが公開されているので,それもよく利用されるようなものは収集して利用できるようにする.しかし学生が行いたい研究がユニークであるほど必要となるデータもユニークなものとなり,学習者自身でデータ収集を行うことが必須となる.この場合も,データのクレンジングやラベリングが容易になるように,注意深く取得方法や取得環境を検討・設計する必要がある.そのためのツールやフレームワーク,サンプルプログラムを作成する.
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Causes of Carryover |
昨今,人工知能関連の最新の技術であるディープラーニングに関する実践的な知識を持った技術者が早急に求められている.ディープラーニングでは,高性能なGPUを搭載した計算機が不可欠である.学生個人の所有しているPCでは現実的な規模の問題へは対応できない.一方本研究課題で開発中の,演習環境ならば対応が可能である.そこで,ディープラーニング教育への対応を行うため,事業期間を延長する. 予算増減の理由は,29年度に予定していた国際会議や国内会議への出張がなかったため,30年度にそれを実施した.このため,30年度に予定していた出張旅費を使用することがなかった.アンケートの集計を自分でおこなったため,謝金は発生しなかった. 使用計画は,国際会議への旅費に430千円,謝金・その他で190千円の予定である.
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