2018 Fiscal Year Research-status Report
実世界の物理制約を曖昧化するパフォーマンス装置の研究
Project/Area Number |
16K00507
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
松浦 昭洋 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (50366407)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 転がり / 弾み / 拡大縮小 / 送風 / 楕円体 / 弾性面 / 複合現実 / ブロック |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の成果を得た。 1. 凸回転体、特に楕円体の転がり・回転を利用したアミューズメントシステムに関して、楕円体と地面の接触面積、その重心の速度、角速度等を音の高さや強さに反映するインタラクティブな音生成システムを構築し、CEDEC2018、エンタテインメントコンピューティング2018で発表し、それぞれオーディエンス賞3位、ベストデモ賞を受賞した。 2. 前年度に発表した三脚巴ブロックに関し、噛み合ったブロックが同期してスライドイン/アウトするという運動性(「滑動性」と呼ぶ)をもつことを、各ブロックの各瞬間の中心座標を求めることで理論的に示し、形の科学シンポジウムで発表した。また、四つ以上の脚部をもつブロックで同様の性質をもつものをいくつか発見した。平行多面体ベースのブロックで、スライドイン/アウトすることで嵌合可能なものを三種類考案し、Bridges2018で発表した。 3. 伸縮性の高いポリウレタン樹脂を用いて作製した弾性面をディスプレイとして、その上で物体を弾ませて操るアミューズメント装置のプロトタイプを作製し、映像表現・芸術科学フォーラム2019で発表した。その中で、細長い形状の物体を一定の方法で投擲して弾性面に当てると自身の方向に弾んで戻ってくる物理現象を実現した。 4.世界または自分自身の拡大縮小(拡縮)を伴う実在感のある複合現実世界の実現を目的として、拡縮する仮想世界に同期し拡縮する、把持して用いる円筒状デバイスを考案し、プロトタイプを作製して映像表現・芸術科学フォーラム2019で発表した。 5. 仮想世界で吹く風に同期して温度制御された風を顔に送出する、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に装着して用いる小型デバイスを開発し、国際会議VRIC2019、展示会Laval Virtualで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず以下の点で、対外発表につながる進展があった。 楕円体の転がり運動を利用したシステムに関しては、インタラクティブな音生成のアルゴリズム・実装の両面で進展した。三脚巴ブロックに関しては、前年度に発表した実績欄にも記載した「滑動性」という現象が生じていることを数理的に正確に示し、より多い脚部をもつある種のブロックでも同様の性質が生じることを明らかにした。実世界の制約を曖昧化するテーマとして、弾性面(膜状)のディスプレイ上で物体を弾ませる装置を新規に開発し、ボールが弾んで戻ってくる(バウンスバックする)現象を実現したことは、新たなパフォーマンス装置およびシステムにつながる大きな進展であった。さらに、複合現実下で使用する円筒状拡縮デバイスや仮想空間内の風に同期して温度制御された風を実世界で送出するデバイスの開発とデモ発表を行った。 これらの進展の一方で、H30年度に進展し始めた装置やシステムの精緻化や成果の論文投稿、実演発表等が課題として残っている。 以上のことを総合的に判断して、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、以下の課題に力点を置き、研究を進めていく予定である。 1. 楕円体、凸回転体に関しては、音生成機能を活かしたパフォーマンス要素のあるインタラクティブシステムを開発し、学会発表、論文投稿を行う。 2. 弾性面上で物体を弾ませるアミューズメント装置に関しては、プレイに適した実スケールの装置を作製し、入出力方法を検討してインタラクティブシステム化し、国際会議および実演発表を行う。 3. ブロックについては、四つ以上の脚部をもつブロックの滑動性の理論的解析を行う。 4. 拡縮デバイスと温度制御デバイスについても、上記1から3と並行して可能な場合は、デバイスの改良およびコンテンツの開発を進める。
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Causes of Carryover |
(理由) これまで製作してきた楕円体については、装置・システム・コンテンツの精緻化と論文投稿の課題が残っていることと、弾性面を用いた装置開発や仮想世界のスケール変化に同期する拡縮デバイスの研究がH30年度後半に大きく進展し始め、次年度に装置やシステムを実スケールにして精度を高めて構築し、論文投稿や実演発表を行うため。 (使用計画) 楕円体、弾性面装置、拡縮デバイス等の製作や実演イベントの実施費用、エンタテインメントコンピューティング、インタラクション等に関する会議での発表、論文別刷代等で使用する予定である。
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Research Products
(16 results)