2016 Fiscal Year Research-status Report
食行動をゲームトリガーに設けることで体験者の行動を誘発するシリアスゲームの提案
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16K00509
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
小坂 崇之 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (10367451)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シリアスゲーム / ゲーミフィケーション / 食育 / 実世界型シリアスゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、咀嚼センサとプロトタイプのゲームシステムの開発を行った。 我々は、咀嚼の検出に咀嚼時に発生する皮膚表面上の起伏を用いて行っている。これまでに開発した咀嚼センサは単一のフォトリフレクタ(距離センサ)を用いて非接触での計測を行っている。しかし、体験者が頭部を激しく動かすことで測定位置がずれ計測精度が低下する問題が発生している。このため単一ではなく左右に複数のフォトリフレクタを配置することによりこの問題を解決する咀嚼センサを今回開発した。頬の片側1cmm感覚で4x4個、16個のフォトリフレクタを配置し、両側で32個のフォトリフレクタを用いて咀嚼時の皮膚表面上の起伏をリアルタイムに取得することができた。片側だけでなく、両側に配置することにより、左右どちらの歯で咀嚼を行っているのかの計測が可能であり、片側だけで噛む偏咀嚼の計測を行うことが可能である。 また、ゲームコンテンツクリア条件に社会的なトリガー(飲食する)を設けることにより、食行動を誘発すう可能性のあるプロトタイプゲームを2種類開発し展示を行った。さらに、様々な社会的トリガーを設けることにより、社会的問題をゲームシステムを用いることにより解決する提案手法の1例としてトリガーに「掃除する」を設けたゲームシステムの提案も行った。展示を行ったエンタテインメントコンピューティング2016において、デモ発表賞、ベスト投稿ビデオアワード、西田二郎賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人の下顎骨には,咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋からなる咀嚼筋が付着しており,咀嚼時にはこれらの筋が総合的に働くことによって咬合力が発揮されると言われている。歯を食いしばったときに顎の外側で硬くなる筋肉を咬筋と呼び、硬い食物をかみ砕くときに働く。こめかみには下あごを引き上げ、顎を前後に引く側頭筋がある。下あごの内側には内側翼突筋があり咬筋や側頭筋と共同して働く、顎を前に突き出すのは外側翼突筋である。申請者は、咀嚼時に起伏する咬筋に注目した。咬筋と、内側翼突筋、外側翼突筋が交差する地点が咀嚼時に最も起伏することを予備実験において確認し計測ポイントとした。 我々は咬筋の両側に反射型光センサを配置し,皮膚表面との距離を無接触で計測する咀嚼センサの開発を行った。左右に複数のフォトリフレクタを配置することにより左右どちらの歯で咀嚼を行っているのかの計測が可能であり、片側の歯だけで咀嚼する偏咀嚼の計測を行うことが可能である。また、同様の原理で、嚥下時に喉仏付近で発生する嚥下筋の起伏を計測することにより嚥下の有無の計測も可能である。 今年度は、開発した咀嚼センサを台2台、開発した。ゲームコンテンツクリア条件に社会的なトリガー(飲食する)を設けることにより、食行動を誘発すう可能性のあるプロトタイプゲームを2種類開発し展示を行っており、計画書通り、おおむね順調に進展している。 しかし、当初の計画では、食行動時の嚥下を検出する嚥下センサの開発までは進んでいない現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した咀嚼センサ、嚥下センサを用いることで享受できるコンテンツの開発をおこなう。食育シリアスゲームと食絵本システムの開発を行なう。 [食育シリアスゲーム] ゲームコンテンツクリア条件として実際の飲食物の摂取を義務付けることで苦手な食物であったとしても自らの意思で飲食物の摂取を行い、偏食を克服するきっかけを与えることができると考え偏食克服を目的とした食育シリアスゲームの開発を行う。ゲームクリア条件として、指定された飲食物を実際に摂取しなければ進めることができない。また、咀嚼回数に応じてコンテンツを変化させることにより食事時の咀嚼回数を増加することも可能となる。さらに、食事は楽しいものを印象付けるために、飲食後は必ず「笑顔」にならなければならない。本システムを用いることで、楽しみながら『偏食』を克服することを可能とする。 [食絵本システム]現世界の飲食物を摂取することで絵本が動的に変化する。実世界の飲食物を摂取し咀嚼することで、絵本のページがめくられていく紙(噛)芝居である。例えば、昔話の「桃太郎」ではバナナを食べると猿が、小魚(骨)を食べると犬が仲間になることで物語が進んでいく。指定された飲食物を摂取することで絵本の結末が動的に変化する。 体験者はゲームをクリアするためには実際の飲食物を飲食しなければならない。必ず偏食が改善させるわけではないが、ゲームを通じて嫌いな飲食物を摂取する「きっかけ作り」が可能である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は615円であった。次年度使用額が生じた理由としては、まず、研究図書の購入が予定より若干少なかったことがあげられる。また、初年度ということもあり、研究成果が実験の水準にまでは達しなかった部分があり、実験における人件費・謝礼など、人件費が発生しなかったことがあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度も計画通り実施を行う予定である。差額の615円は、実験における人件費などに充てる予定である。
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