2017 Fiscal Year Research-status Report
食行動をゲームトリガーに設けることで体験者の行動を誘発するシリアスゲームの提案
Project/Area Number |
16K00509
|
Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
小坂 崇之 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (10367451)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | シリアスゲーム / ゲーミフィケーション / 実世界型シリアスゲーム / 偏食克服 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、咀嚼センサ1を用いて評価実験をおこなった。実際の咀嚼回数と咀嚼センサで検出した咀嚼回数を比較することによりセンサ評価をおこなった。被験者は、小学4年生の3名(10歳,男2名、女1名)であった。被験者は咀嚼センサを装着し、キャリブレーションをおこなったのち、市販のガムを2分間咀嚼し、咀嚼の検出が可能かどうか実験をおこなった。食事時の咀嚼検出を目的としているため、被験者にガムの噛み方などにについては一切説明はおこなわず、「いつも通り噛んでください」と説明した。実際の咀嚼回数の検出には、ビデオカメラを用いて撮影をおこない実験後に、映像を見ながら回数を数えた。実験によって咀嚼センサによる検出率は48%と低い検出率になった。実験時、被験者は、頭部を左右に動かし、引率した保護者や友達のほうに頻繁に頭部を動かす仕草が見られた。また、咀嚼センサは、被験者の頭部にヘッドフォンの要領で頭部に固定されているが、被験者には重量が重く、頻繁な頭部の動きで脱落しかけ、被験者自身が正しい位置に戻す仕草が見られた。さらに、実験中に「おいしい」「つかれた」など、会話もおこなっていた。このため低い検出率になったと考えられる。咀嚼センサはゲーム中に用いることを想定すると、このような被験者の予期せぬ動きや、重量に対応させる必要性が求められる。 そこで、予期せぬ動きや重量に対応するため、新たに筋電位を用いた咀嚼センサの開発をおこなった。これまでは非接触でおこなっていたが、咀嚼時に発生する筋電位を計測し咀嚼を検出する方式である。また、嚥下センサのプロトタイプの開発もおこなった。 さらにゲームコンテンツクリア条件に社会的なトリガー(飲食する)を設けることにより、食行動を誘発すう可能性のあるプロトタイプゲームを2種類開発し展示を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、今年度、開発した咀嚼センサの検出率を実験により求めた。結果、検出率は48%と低い結果となった。咀嚼センサは、被験者の頭部にヘッドフォンの要領で頭部に固定されているが、実験時、頻繁な頭部の動きで脱落しかけることも多く見られ、被験者自身が正しい位置に戻す仕草が見られた。さらに、「おいしい」「つかれた」など会話もおこなっていた。このため低い検出率になったと考えられる。開発した咀嚼センサをゲーム中に用いることを想定すると、このように被験者の予期せぬ動きなどに対応させる必要がある。 そこで、今年度、予期せぬ動きに対応するため、新たに筋電位を用いた咀嚼センサの開発をおこなった。これまでは咀嚼時に発生する咀嚼筋の起伏を非接触で検出をおこなっていたが、咀嚼時の筋電位を計測し咀嚼を検出する方式に変更した。筋電位センサを用いて頭部のこめかみ付近の側頭筋の左右の筋電位を検出する。左右の筋電位を検出することでこれまで通り片側だけでなく、両側のこめかみに筋電位センサを配置することにより、左右どちらの歯で咀嚼を行っているのかの計測が可能であり、片側だけで噛む偏咀嚼の計測を行うことも可能となった。 また、咀嚼だけでなく嚥下を用いることでゲームシステムの選択肢が増えると考え、嚥下センサの開発もおこなった。嚥下は複雑な嚥下運動でおこなわており、嚥下を筋電位のみで検出するのは困難である。そこで咽頭の動きを加速度センサで検出し、咀嚼センサと併用することにより嚥下を検出可能とした。さらに、ゲームコンテンツクリア条件に社会的なトリガー(飲食する)を設けることにより、食行動を誘発すう可能性のあるプロトタイプゲームシステムを開発し展示を行った。以上のことから、研究は、おおむね順調に進展してる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまで開発した咀嚼センサ、嚥下センサを用いて、どのようなゲームコンテンツを享受できるかを探るべく開発を行う予定である。ゲームクリア条件として、実際に飲食物を摂取しなければならない。摂取した飲食物の種類や咀嚼回数によりゲーム内で様々なイベントが発生する。子供たちが熱中するゲームという「餌」を用いて、自らの意思で飲食物を摂取するきっかけを作り、実世界の「偏食の克服」「咀嚼回数の増加」といった実世界に働きかける実世界型シリアスゲームの開発を行う。 具体的には、咀嚼増加を目的として、体験者の咀嚼を検出し、咀嚼回数に応じて模型の車を進ませ、先にゴールまで到達したほうが勝者である。また、咀嚼するたびに物語が進行する「噛み芝居」システムも検討している。咀嚼するたびに絵本が進行する。例えば童話の桃太郎。単に咀嚼するだけでは、一人で鬼島に乗り込み敗れてしまう。しかし、途中で、骨を連想する小魚を摂取することで、犬が仲間になる。さらにバナナチップを摂取することで猿が仲間になり、摂取るする飲食物と咀嚼回数に応じて芝居が変化する。このように咀嚼をゲームにもちいることで咀嚼回数の増加や日頃の咀嚼に対する意識を高めることができるのではないかと考える。 また、開発したゲームコンテンツの評価実験を行う。展示会や食育に関するイベントで展示を行う予定である。評価実験(アンケート調査、インタビュー調査)をおこなう予定である。検証実験は被験者に目的を説明、同意のもので調査をおこなう。特に被験者のアレルギーの有無の確認は厳守する。食中毒などを防止するため生鮮野菜や調理が必要な食材は用いない。クッキーやガムなどの食材を用いる予定である。実験で得られた個人データは第三者に漏れることのないように厳重に管理し、本研究課題以外で用いることはしない。データの取り扱いは、個人情報保護法令に準拠する。
|