2016 Fiscal Year Research-status Report
紫外線LEDを用いた活性酸素生成デバイスの創出と光化学的な物質動態評価への展開
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16K00516
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹田 一彦 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00236465)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久川 弘 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (80263630)
中谷 暢丈 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (90423350)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒドロキシルラジカル / 亜硝酸イオン / 紫外線LED / テレフタル酸 / 競争反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はまず波長355nmの紫外線LEDと発生試薬として亜硝酸イオンを用いてヒドロキシルラジカルの発生特性を明らかにした。その結果、波長355nmの紫外線LEDを用いて亜硝酸を発生試薬とした時は、従来のキセノンランプを用いた時よりも約10倍以上のヒドロキシルラジカルが発生すること、また、他の硝酸や過酸化水素を発生試薬として用いた時にはほとんどヒドロキシルラジカルが発生しないことなどがわかった。これらの特徴はLEDの発光スペクトルと亜硝酸イオンの吸収スペクトルがよく重なっていることが理由であると考えられる。 次にテレフタル酸をヒドロキシルラジカルの検出試薬として用い、ヒドロキシルラジカルと物質の反応速度定数を計測するためのフロー分析装置を作製した。この装置は、石英製のU字菅と円筒状リフレクターを備えたLED照射オンラニンリアクターと試料注入バルブ、蛍光検出器を組み合わせ、試料の注入から光照射、蛍光検出までをオンラインで行うことができる。 本装置をもちいて目的物質とテレフタル酸の競争反応をもちいて、物質とヒドロキシルラジカルの反応速度定数を計測した。対象物質として低分子の化合物や、無機塩類を用いた。28年度中はメタノール、アセトン、酢酸、エチレングリコールなど16物質の反応速度を計測し1E+07~1E+10 1/Msの反応速度定数を得た。これらの値は過去の報告と良く一致しており、本法が物質とヒドロキシルラジカルの反応速度定数の計測に適応できることを示した。しかし、塩化ナトリウムや臭化ナトリウムは既報の数値とは一致しなかった。このことについて詳細な検討を行ったところ、本法で計測される反応速度定数は、逆反応も含んだ「見かけ上の反応速度定数」であり、これらの物質は逆反応の反応速度が著しく速いことがこれらの違いになってるのではないかと考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
355nmの紫外線LEDと亜硝酸イオンによるヒドロキシルラジカルの発生実験が順調に進んだこと、またテレフタル酸によるヒドロキシルラジカルの検出が高感度で簡易であったことなどが理由で、フロー分析装置が比較的短時間で稼働し始めた。このフロー分析装置で多くの物質の反応速度定数を簡易にかつ高精度に分析することができ、計画通り研究を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は28年度に作成したフロー分析装置を用いて、環境中でのその残留性が問題となる農薬や医薬品についてヒドロキシルラジカルとの反応速度定数を計測する。また、これらの物質の直接的な光分解速度を計測し、水圏でのこれらの物質の光化学的な半減期、分解速度を計測する予定である。また新規なラジカル発生物質やその検出試薬についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
フロー分析装置が比較的に安価に製作できたことが最も大きな要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規なラジカル発生物質やその検出試薬、それに応じた新たな波長の紫外線LEDとその駆動装置などの購入に充てる予定である。
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