2017 Fiscal Year Research-status Report
紫外線LEDを用いた活性酸素生成デバイスの創出と光化学的な物質動態評価への展開
Project/Area Number |
16K00516
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹田 一彦 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00236465)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久川 弘 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (80263630)
中谷 暢丈 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (90423350)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ヒドロキシルラジカル / 亜硝酸イオン / 紫外線LED / テレフタル酸 / 除草剤 / 殺虫剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は前年度の成果を受けて、環境中に放出される可能性の高い農薬や医薬品について、ヒドロキシルラジカルとそれらの反応速度定数を測定した。農薬としてはピメトロジン、ダイジノンなどの殺虫剤、シメトリン、ダイアジノンなどの除草剤、医薬品のテオフィリン、ペントキシフィリン、カプトプリルについてヒドロキシルラジカルとの反応速度定数を計測した。これらの物質のFo/F vs. 濃度のプロットは1を通る直性を示し、その直線の傾きから計算されるヒドロキシルラジカルとの反応速度定数の値は、報告値のないピメトロジンを除いて、他の研究者らの報告値とよく一致し、本法の信頼性を確認した。また、これらの物質の純水中での直接的な光分解速度定数を測定し、環境中での直接分解とヒドロキシルラジカルによる間接分解について検討した。その結果、ピメトロジンでは直接分解速度が速いため、ヒドロキシルらかルによる分解は重要でないのに対して、ヘキサジノンやシメトリンでは、ヒドロキシルラジカルの定常状態濃度の高い河川や湖水の環境においてヒドロキシルラジカルによる分解が重要になるということがわかった。 これらの一方で本法を用いた反応測定数の計測がうまくいかない物質があった。これらの物質ではFo/F vs. 濃度のプロットが1を通る直性にならず、負の傾きをもつことがあった。これらの原因はそれら自身や分解生成物、ヒドロキシルラジカルとの反応生成物が蛍光性を有するためであると考えられる。 また、本法で用いたテレフタル酸とヒドロキシルの反応を過酸化水素の濃度定量に応用して高感度で簡易、また有害な物質や高価な酵素を用いることなく、海水中のnMレベル過酸化水素の定量に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テレフタル酸によるヒドロキシルラジカルの検出が高感度で簡易であったため、前年度に行った方法の確立が予定どおり進展し、フロー分析装置が比較的短時間で稼働し始めた。このフロー分析装置の操作性が大変よく、多くの実験や検討が短時間で行うことがでた。その結果として多くの農薬や医薬品の反応速度定数の計測を行うことができ、さらに直接分解速度の比較から、それらの物質の環境中での光化学的な半減期の推定と動態評価を行うことができた。概ね計画通りに研究を行うことができた。 一方で昨年当初の計画では新規なラジカル発生物質やその検出試薬についても計画はしていたが、本年度は農薬や医薬品の反応速度定数の計測と環境中での光化学的な動態解明を優先させて行ったためヒドロキシルラジカル以外の新規なラジカルについては検討できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度である。まず、28年度に開発し29年度で多くの物質の反応速度定数を計測したフロー分析装置でうまくいかなかった物質がいくつかあるが、これらについて原因を解明し、反応速度の計測を試みる。具体的には、まずバッチ法で紫外線LEDの照射を行い、それをHPLCで分離分析を行い、テレフタル酸とヒドロキシルラジカルの反応で生成する2-ヒドロキシテレフタル酸の蛍光のみを測定する予定である。これにより、物質のそのものや、分解生成物、ヒドロキシルラジカルとの反応生成物が蛍光性を有していても、これら物質を分離して2-ヒドロキシテレフタル酸のみを定量できるためにFo/F vs. 濃度のプロットが1を通る直性になり、反応速度定数の計測が可能になると考えている。これらの方法を通して本研究で開発したフロー分析装置の問題点を明らかにし改良するとともに、これまで計測できなった物質の反応速度定数を明らかにし、環境中での光化学的動態の解明を行っていく。 また新規なラジカル発生物質やその検出試薬についても検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
フロー分析装置が比較的に安価に製作できたことや、故障やトラブルが少なかったことが要因である。また共同研究者の出張などの都合で予算の執行が一部滞っているところもある。次年度は最終年であるため計画遂行のため努力する。特に新規の物質や新規なラジカルル発生物質やその検出試薬、それに応じた新たな波長の紫外線LEDとその駆動装置などの購入に充てる予定である。
|