2016 Fiscal Year Research-status Report
微量金属と軽元素安定同位体を用いた農産物・食品安全の生育環境トレーサビリティ研究
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16K00519
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
伊永 隆史 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (30124788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手束 聡子 千葉科学大学, 危機管理学部, 講師 (70435759)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 環境計測 / 微量元素 / 安定同位体 / トレーサビリティ / 質量分析法 / コメ / 生育環境 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.わが国で代表的な農産物であるコメに絞って、4軽元素(H,C,N,O)の安定同位体比の質量分析法により、データベースの作成に向けて、昨今の異常気象、異常降雨による異常値を気象データと照合しながら研究調査を開始した。 2.中国出張により、素性の確かな中国産コメの現地調査、試料収集のため、西安、杭州、温嶺3都市の大学等を訪問し学術交流を行う今後の計画について、(1)西安交通大学薬学部大学院において科研費の採択課題”Advanced chemical information on reliability evaluation of the food origin certification by stable isotope ratio mass spectrometry”について、中国製PCを用いたパワーポイントにより特別講演を行い、好評を博した。通訳は西安交通大学医学部周小靖教授が務めた。(2)杭州市の浙江工業大学で学術交流会を行い、特別講演2件を行った。(3)温嶺市の浙江省分析機器工業協会にて特別講演”Advanced chemical information on reliability evaluation of the food origin certification by stable isotope ratio mass spectrometry”を行い好評を博した。これら3件の学術交流により、素性の正しい中国産コメ試料や漢方薬試料の入手等で今後の研究展開につながるルートが開拓できた。 3.安定同位体比分析と微量金属元素組成分析の組合せによる生育環境トレーサビリティの高精度化については、長所・短所が存在するが、複数の分析法を組み合わせることによって、高精度な産地推定技術の開発を目指せる可能性を秘めているため、公定法化をめざしコメの事例研究を積極的に推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平成29年2月に「週刊ダイヤモンド」誌上で報告されたとおり、JAグループ京都の米卸が販売するコメの産地判別検査を実施した結果、「滋賀産」や「魚沼産」として販売されていたコメに中国産が混入している疑いがあることが分かった。この事件が起きることは想定範囲内であったが、以来、中国産コメの生育環境データを収集する重要性が増したことから、当初計画通り、中国3都市出張を実行した。 2.わが国で最も代表的な農産物であるコメに評価対象を絞って、4軽元素(H,C,N,O)の安定同位体比の質量分析データを用いる産地推定を高精度化することを本研究の目的としているが、同位体比データベース作成において昨今の異常気象がもたらすコメの出穂期の異常降雨による影響が避けられないことが判明し、平成28年度の研究では、生育環境トレーサビリティ研究の視点からみて異常データといえる値を探索して見つけ出し、データベースから削除する運びである。 3.素性の確かな中国産コメの現地調査、試料収集のため、西安、杭州、温嶺3都市の大学等を訪問し学術交流を行う今後の計画について、平成29年3月現地訪問を実施した。 4.平成28年度の交付申請書に記載のとおり、コメ分析データ中の異常気象、異常降雨の影響を受けた異常値の発見、中国産コメ試料の現地調査とコメ資料収集、測定データのクロスチェック、高精度化、生育土壌由来の微量金属元素分析について、実験検討を行ったので、平成28年度においては当初の研究計画通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成28年度に新規採択された科研費であるが、4月時点では不採択であり、10月になってから追加で交付決定されたため、半年遅れで研究をスタートした経緯がある。しかしながら、研究計画をコメに絞って鋭意促進し、29年度への繰越を発生させないよう留意した。29年度研究費についても、研究の遂行に合わせ計画通りに執行していく。 2. 日本産コメの高精度な産地判別評価を行うには、素性の確かな中国産コメの現地調査、試料収集が必要なため、中国現地(西安、杭州、温嶺)3箇所へ赴き、本研究をパワーポイントで現地の中国人に説明しながら試料を収集した。この際、中国人が受け入れやすい中国製PCを購入し、パワーポイントで研究概要を見せて理解を得たうえで、中国産コメ試料の収集に協力を依頼し成功した。したがって、平成29年度にもコメ収穫時期に合わせて中国出張を予定する。 3.現在保管している国産コメ試料は2300の膨大な数に上るため、民間機関へ一部委託してデータのクロスチェックを進める一方、異常降雨の影響を明らかにすることなどによって計画通りのデータベース構築が進める。 4.安定同位体比データの信頼性を増すため、微量金属元素組成分析との組合せによる生育環境トレーサビリティの高精度化については、長所・短所が存在するが、複数の分析法を組み合わせることによって、高精度な産地推定技術の開発を目指せる可能性を秘めているため、農林水産省の公定法化もめざしながら、コメの産地推定事例研究を積極的に推進していく。
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Causes of Carryover |
本学術研究助成基金助成金は、平成28年度に新規採択された科研費であるが、4月時点では不採択であり、10月になってから追加で交付決定されたため、半年遅れで研究をスタートした経緯があるため、6385円の残額発生を余儀なくされたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度交付予定の学術研究助成基金助成金に組み入れて、次年度使用額として適正に使用する予定である。
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