2019 Fiscal Year Research-status Report
北極温暖化増幅及び東南極温暖化抑制における雲・海氷の役割に関する研究
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16K00523
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
山内 恭 国立極地研究所, その他部局等, 名誉教授 (00141995)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 北極 / 東南極 / 雲 / 海氷 / 長波放射 / 極渦 / 気団 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化の中での北極の温暖化増幅と東南極の温暖化抑制における雲と海氷の役割を明らかにすることが目的である。 2019年度は、これまでの北極スバールバル・ニーオルスンでの観測データからの議論に対比する形で、南極での事象を調べた。かつて、内陸ドームふじ基地での越冬観測が行われた際に捉えられた、冬季の気温急上昇現象をまず再度検証した。その結果、北極でみたと同種の現象であり、ブロッキング現象が起こって、ジェット気流が蛇行し、極渦は歪み、リッジが南極大陸内に深く侵入していたことが確認された。この現象に伴い、北極同様に、地上観測している長波下向き放射が著しく増大していることも、ドームふじ基地、昭和基地合わせて確認できた。 南北両極で同様な現象が起こり、温暖化に寄与していることは確認できたが、南北の違いがあるのか否かを調べた。この10年(2007年~2016年)の間、下向き長波放射量にして最大値の90%以上をとる事例数(1時間平均値で)をみると、年によっては南北の違いがあまり見られないこともあったが、多くの年では北極で多くの発生頻度がみられた。即ち、北極での方がより強い、低緯度からの湿潤暖気流入があることが分かった。これが、熱的に、定量的にどのくらいの寄与であるのかは、今後の課題である。 その他、先に実施した、GRENE北極気候変動研究のまとめのレビュー論文を執筆し、投稿に至った。上記の北極における低緯度からの熱輸送が、北極温暖化増幅に重要な役割を果たしているとの研究成果を含むものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 2019年度においては、これまでの北極の研究に加え南極のデータの解析を進め、相似的な状況と異なる状況が把握できた。これらの結果を、国際学会で発表することができたし、また、かつて実施した、本研究の元となるGRENE北極気候変動研究の膨大なまとめレビュー論文を執筆することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
既に、当初設定した研究期間は終了しているが、もう1件の国際学会での発表を目指し、延長を申請したので、2020年度においても、一部研究を継続する。 2019年度に進めた南極域での現象把握を進め、実態を定量的に把握する手法を検討する予定である。このことを通じ、これまでどちらかと言うと定性的な議論が多かったところを、より補強して、低緯度からの湿潤暖気流入の極域の温暖化への寄与、役割の位置づけを行う。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表のため、国際学会(南極研究科学委員会科学シンポジウムSCAR2020/OSC)への参加経費に充当するため。
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