2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00526
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
村田 昭彦 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 室長 (10354474)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 台風 / 降水 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、前年度に引き続き、領域気候モデルによる再現結果と観測データとの比較から、日本付近における現実の台風の再現性の検証を実施した。水平格子間隔5kmの領域気候モデルを用いた1993年の台風第13号を対象とした再現実験の結果から、Mori et al. (1999)などの観測結果との比較を詳細に行った。その結果、この台風の初期発達過程がモデルによるシミュレーションによって、良好に再現されていることが分かった。 並行して、前年度に作成した台風抽出ツールを現在気候実験データに適用し、台風に伴う降水とそうでない降水のカテゴリー化を実施した。この際、台風が温帯低気圧に変質するときの抽出数が気候値よりも少なめであることが判明したため、台風の温帯低気圧化過程に特化した専用のスキームを元のスキームに加えた。また、ツール内のパラメーターの調整を適宜行った。最終的には、この抽出ツールで取り出された台風の個数は気候値のそれと比べて同程度となった。 降水のカテゴリー化で得られた台風に伴う降水量について、現在気候シミュレーションから得られた値を観測値と比較した。年間降水量については、観測値で大きな値が示された九州北部・四国南部・紀伊半島の南向き斜面において、シミュレーション結果でも同様な傾向が見られた。台風に伴う降水量を台風の期間で除した時間台風降水量を定義し、この量の再現性も調べた。なお、この量は台風の進路及び個数の影響を出来る限り抑制するために導入した。再現性検証の結果、時間台風降水量はシミュレーションによる値と観測値との間に良い対応が見られ、再現性は良好であることが分かった。 さらに、台風抽出ツールを将来気候実験データにも適用し、台風に伴う降水とそうでない降水のカテゴリー化のテストに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
領域気候モデルによって再現された現実の台風の再現性の検証の項目においては、予定通り現実の台風事例について、領域気候モデルを用いた再現実験結果と観測データとの詳細な比較を進めることでモデルの再現性の検証を実施している。また、台風抽出ツールの現在気候実験データへの適用による降水カテゴリー化のテストの項目においては、予定通りツールの調整及び結果の検証を行っている。更に、現在及び将来気候実験データを用いた台風降水の将来変化に関する解析の項目においては、現在気候実験データから日本付近における台風降水の地球温暖化による変化を解析すると共に、将来気候実験データを用いた解析にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、領域気候モデルによる再現結果と観測データとの比較から、日本付近における現実の台風の再現性の検証を行う。また、台風抽出ツールを将来気候実験データに適用し、降水カテゴリー化を本格的に実施する。前年度に得られた現在気候の結果と併せて、台風に伴う降水量の地球温暖化に伴う変化を解析する。ダウンスケーリングの利点を生かし、時空間的に詳細な降水量変化を明らかにする。また、台風に伴わない降水量についても台風に伴う降水と同様な解析を行う。得られた成果を気象学会等の研究会で発表するとともに、論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
理由: 概ね計画通りの使用額であるが、研究の進捗状況に応じて旅費等の支出を抑制すると共に、初年度に購入したストレージ装置の翌年以降の保守費用を見越して購入金額を節約する等したため若干の次年度使用額が生じた。 使用計画: 研究発表のための旅費、初年度に購入したストレージの保守費用等に充当する計画である。
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Research Products
(2 results)