2016 Fiscal Year Research-status Report
顕微分光法による元素状炭素の特性評価と風化メカニズムの解明
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16K00528
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 信靖 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物質計測標準研究部門, 主任研究員 (70415644)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラマン分光 / 元素状炭素 / 大気粉じん |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、顕微分光法による元素状炭素の特性評価と風化メカニズムの解明を目的としている。この申請課題を遂行する上では、構造形態の異なる元素状炭素やその風化生成物を顕微分光法により評価・分類できることが必須となる。このため、研究計画の初年度に当たる平成28年度は、種々の異なる構造や形態の元素状炭素材料を入手して、顕微ラマン分光装置を用いて構造や形態に依存するスペクトルの評価と分類を試みた。入手した元素状炭素の多くは、粒径や表面状態等が大きく異なる。また、将来的には大気粉じんをフィルター捕集試料に適用することを想定している。これらのことから、予め微粉化した元素状炭素試料をペレット化して評価を行った。その結果、顕微ラマン分光装置では、sp2結合に由来するGバンド(1580 cm-1付近)と、sp3結合に由来するDバンド(1330 cm-1付近)、並びにDバンドの倍音に由来するG’バンド(2500-2800 cm-1)のピークを指標とすることにより、入手した元素状炭素試料の種類を大まかに分類することができた。また、顕微ラマン分光装置で特徴的なスペクトルを示した元素状炭素試料の一部については、大気粉じん中の炭素成分評価に広く用いられている、炭素成分分析計でも測定・評価を行った。その結果、顕微ラマン分光装置で得られたスペクトルには明確に差があった試料についても、炭素成分分析計では差が見られないケースや、その逆のケースもあった。このことから、炭素成分分析計で定義される元素状炭素の画分は、顕微ラマン分光装置で観測できる構造だけでは説明できず、両者の結果を比較して議論する上では、別のアプローチや解釈が必要であるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度については、研究計画書にある通りの進捗があったため、概ね順調に進展していると判断した。次年度以降についても、研究計画書にある通り進展するように努める。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度からは、実際の環境試料や風化過程を観察するための、前処理法の検討を開始する。その前段階として、連携研究者より提供してもらったフィルター上に捕集した大気粉じん試料に対して、顕微ラマン分光装置や顕微FT-IR装置を使った測定を試みる。その上で、前処理方法の方針を決定して検討を行う。また、次年度以降の風化メカニズムを解析する上で必須となる、実験室内での風化実験系の構築を開始する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、入手した複数の元素状炭素について、他の装置等を用いて申請者が特性評価することを予定していた。しかしながら、すでに特性値が提供されている元素状炭素を入手することができたため、使用額が当初の計画よりも少なく済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画書に記載した通り、本研究は多くの共用装置を利用して遂行している。しかしながら、年度が変わったことにより、使用している共用装置の時間単価が上昇してしまった。このため、繰り越した研究費については、その差額の補填に充当する予定である。
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