2016 Fiscal Year Research-status Report
北極海の海氷減少による海洋環境、プランクトン変動の実態解明
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16K00533
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
伊東 素代 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, 技術研究員 (60373453)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 北極海 / 海洋物理 / 海洋生態 / 環境変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
現場観測としては、2016年9月に海洋地球研究船「みらい」にて、北極海チャクチ陸棚域の4系の係留系の回収を行ない、1年間の良好なデータを取得することに成功した。また、ほぼ同じ構成の係留系を4系再設置し、2017年9月の回収時まで1年間、データ取得を継続する予定である。これらのうち2系の係留系では、新たに係留式クロロフィルセンサーを取り付け、これまでも取得してきた海洋環境、動物プランクトンの時系列データに加えて、動物プランクトンの餌となる植物プランクトンの変動を同時に把握するためのデータ取得を開始した。
これまで取得した係留系観測データの解析については、ADCP音響データとネット調査による動物プランクトン量の比較を実施することで、音響データから動物プランクトン量の長期時系列データを復元することに成功した。特に、海氷減少が著しい北極海バロー海底谷の動物プランクトン量の2000-2003年、2010-2013年の季節、経年変動のデータからは、現在進行している急速な海氷減少と水温上昇によって、2010年代は2000年代に比べて、動物プランクトン量の増加が起こっていることが示唆される成果が得られた。この結果は英文論文として投稿準備中である。また、バロー海底谷以外でも、太平洋側北極海の複数の係留観測点における動物プランクトン量の時系列データが得られ、動物プランクトン量の季節変動の海域による違いがあることなどが示唆される結果も得られている。
北極海では、船舶観測が可能な7-10月以外の動物プランクトン量のデータはほとんどなく、その季節、経年変動はほとんど明らかになっていない。そのため、本研究で行っている音響データからの動物プランクトン量の復元は有益なアプローチ方法となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現場観測については、北極海チャクチ陸棚域の4系の係留系の回収、再設置ともに予定通り実施することができた。回収した係留系のデータはすべて良好であった。また、係留式クロロフィルセンサーについても2016年9月から予定通り係留観測を開始した。
データ解析については、係留系で取得した音響データから、動物プランクトン量の長期の時系列データの復元に成功するなど、順調に進展している。また、北極海の急激な環境変化で、動物プランクトン量の増加が起こっている可能性が示唆され、国際学会で発表を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
現場観測については、当初の予定通りに2017年9月に海洋地球研究船「みらい」にて、現在設置中の4系の係留系の回収、再設置を行う。当初計画では2017年に、北極海広域での音響、ネット比較観測の実施を予定していたが、2010、2011年に行った観測データから比較的精度の良い回帰式が得られることが分かったため、比較観測については実施しない予定である。
データ解析については、(1)北極海の急激な環境変化による動物プランクトン量の増加に関する成果については、英文論文にまとめ投稿する。(2)2017年9月に回収予定の係留系では、新たに係留式クロロフィルセンサーの観測データが得られるため、現在進めている海洋環境と動物プランクトンの変動に加えて、植物プランクトンの季節変動との関係を解析していく、計画である。
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Causes of Carryover |
2016年度中の論文掲載には至らなかったため、主に論文掲載費用として計上していた予算が未使用になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文は現在投稿準備中であり、英文校閲、掲載費用として支出する計画である。
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Research Products
(5 results)