2019 Fiscal Year Research-status Report
北極海の海氷減少による海洋環境、プランクトン変動の実態解明
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16K00533
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
伊東 素代 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), 技術研究員 (60373453)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 北極海 / 海洋物理 / 海洋生態 / 環境変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
現場観測としては、2019年8月にアメリカ沿岸警備隊砕氷船「ヒーリー号」にて、北極海チュクチ陸棚域の6系の係留系の回収を行ない、それぞれ1-2年間の良好なデータを取得することに成功した。バロー海底谷には、昨年と同様の構成の係留系を3系再設置し、2020年9月の回収時まで更に1年間データ取得を継続する予定である。また、バロー海底谷、チュクチ陸棚斜面域にて、係留点を含む横断断面での水平、鉛直的に高解像度なCTD、ADCP、採水観測を実施し、水温、塩分、流向流速、栄養塩、クロロフィルなどの観測データを取得した。
これまで取得した観測データの解析としては、係留系による海洋環境やADCP音響データ、人工衛星データから、バロー海底谷における海洋環境、植物、動物プランクトンの長期変動を明らかにする解析を行った。海象、海氷状況が厳しい北極海の船舶観測は、機会も少なく、実施時期も夏季に限定されるため、動物プランクトンの長期変動の研究結果はほとんどない。本研究で用いた係留系の音響データによる、動物プランクトン量の復元、長期変動の解明は、観測データの少ない海域に有効なアプローチ方法である。この研究結果は査読付き英文雑誌に投稿中である。また、係留系や船舶観測データを用い、動物、植物プランクトンの変動要因である、チュクチ陸棚域の亜表層の水温上昇の実態把握と原因解明、北極海海盆域への影響を英文論文にまとめ、査読付き雑誌に投稿準備中である。
また、2016-2019年に取得した係留式クロロフィルセンサーによる植物プランクトンデータとADCPから得られた音響による動物プランクトンデータの解析を進めている。人工衛星による植物プランクトンデータは開水域に限定されるため、近年注目されている海氷下での植物プランクトンのブルームを捉えるには、本研究で実施した係留式クロロフィルセンサーによるデータ取得は有効である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現場観測については、2019年8月の北極海チュクチ海の6系の係留系の回収、3系の設置とも予定通り実施することができた。回収した係留系のデータは全て良好で、 本科研費予算で観測している係留式クロロフィルセンサーの観測も成功し、通年の時系列データが取得できた。他の係留センサーと共にクロロフィルセンサーも再度、2019年8月から予定通り、係留観測を継続しており、2020年9月まで、更に1年間の観測データを取得中である。
データ解析については、近年の北極海の海氷減少によって起こった、バロー海底谷における10年規模の海洋環境、植物、動物プランクトンの変動に関する研究成果を査読付き英文雑誌に投稿中である。バロー海底谷では2010年代は2000年代に比べて、植物プランクトン量の増加が起こり、餌環境の改善と水温の上昇によって動物プランクトンも増加していることや、植物プランクトン、動物プランクトン共に増加しているが、動物プランクトンの補食圧の増加が上回るため、底層生物へ有機炭素の供給量はむしろ減少している可能性が示唆される結果が得られた。この研究成果は、2019年度中の掲載を目指していたが、掲載には至らなかった。また、動物プランクトン、植物プランクトンの変動に影響を与える可能性がある過去30年間のチュクチ陸棚域における水温上昇、その海盆域への影響、変動メカニズムを明らかにし、研究成果を英文論文としてまとめ、投稿準備中である。
また、2016年から開始した係留式クロロフィルセンサーから取得した植物プランクトンデータは、バロー海底谷を含む2地点で、3年間の通年の時系列データが得られた。この観測データを用いて、動物、植物プランクトンの、季節、経年変動や、海氷・海洋環境との関係性の海域や年による違いを明らかにするための解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現場観測については、2020年9月に海洋地球研究船「みらい」の航海で、現在係留中の3系の係留系の回収、再設置を行う。また、係留点を繋ぐ観測線で、水平、鉛直的に高解像度な横断断面観測を行う予定である。更に、2020年7、9月にカナダ沿岸警備隊砕氷船「ローリエ号」の航海で、船舶による水平、鉛直的に高解像度なバロー海底谷の横断断面観測を行う予定である。 データ解析については、北極海の急激な環境変化による10年規模の動物プランクトン量の増加に関する研究成果は、現在、査読付き英文雑誌に論文を投稿中であり、2020年度中の掲載を目指す。過去30年間のチュクチ陸棚域における海氷減少、水温上昇とその海盆域への影響に関する研究成果は、2020年度中に査読付き英文雑誌投稿予定である。また、2020年9月に回収予定の係留系からは、北極海の複数の係留点で4年分の係留式クロロフィルセンサーの観測データが得られる計画である。得られたデータから、係留観測データの利点を生かし、現場が海氷に覆われている時期も含めた、植物プランクトン、動物プランクトンの季節、経年変動の関係、その海域による違いの解析を更に進めていく計画である。既に取得した観測データから、海氷が融け切る前から植物プランクトン、動物プランクトンの増加が起こっていることが明らかになりつつある。また、投稿中の論文では長期変動に注目した解析を行ったが、新たに取得した観測データからは、日変動や季節変動などのより短期の変動も含めた解析を行う計画である。
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Causes of Carryover |
年度内に論文掲載に至らなかったため、論文掲載費用として計上していた予算が未使用となった。論文は投稿中であるため、掲載費用として支出する計画である。 論文掲載後の国際学会での発表を予定していたが、年度内に論文掲載に至らなかったため、外国旅費として計上していた予算が未使用となった。論文掲載後に国際学会の発表のための外国旅費として支出する計画である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Analysis of the Beaufort Gyre freshwater content in 2003-20182019
Author(s)
Proshutinsky, A., R. Krishfield, J. Toole, M.-L. Timmermans, W. Williams, S. Zimmerman, M. Yamamoto-Kawai, T. W. K. Armitage, D. Dukhovskoy, E. Golubeva, G. E. Manucharyan, G. Platov, E. Watanabe, T. Kikuchi, S. Nishino, M. Itoh, S.-H. Kang, K.-H. Cho, K. Tateyama, and J. Zhao
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Journal Title
JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH - Oceans
Volume: 124
Pages: 9658-9689
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Nutrient and phytoplankton distributions associated with ocean circulation, eddies, and mixing in the Pacific Arctic Region2019
Author(s)
Nishino, S., A. Fujiwara, Y. Kawaguchi, T. Shiozaki, M. Itoh, T. Hirawake, M. Yamamoto-Kawai, M. Aoyama, N. Harada, T. Kikuchi
Organizer
Future Oceans 2 - the 2nd IMBeR Open Science Conference
Int'l Joint Research
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