2016 Fiscal Year Research-status Report
フィールドワークと先端的ベンチワークを融合した福島原発事故による遅延的影響の解析
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16K00537
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 正敏 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60515823)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 福島原発事故 / 長期放射線被ばく / 遅延的放射線影響 / 野生ニホンザル / 細胞樹立 / iPS化 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原発事故による低線量・低線量率長期放射線被ばくが細胞生物学的手法によって検出される遅延的放射線影響を誘導する可能性を検討するために、福島県内の放射性物質汚染地域に棲息していた野生ニホンザルの筋肉試料を収集し、解析に用いるために筋肉試料から初代培養細胞を樹立した。当該年度に収集したニホンザルは汚染地域で最長5年間被ばくした試料となる。試料収集の実績は、汚染地域から40頭、非汚染地域から10頭の野生ニホンザルの筋肉試料を収集した。筋肉試料は凍結保存すると共に、初代線維芽細胞の樹立に使用した。当初は10%のウシ胎児血清を含むDMEM培地中に筋肉組織辺を入れて線維芽細胞の樹立を試みたが、出現率が非常に低い事が判明した。そこで同じ個体の筋肉組織をDMEM培地とDMEM/F12培地の2種類で同時に検討したところ、DMEM/F12培地で細胞が出現する個体が多かったため、ニホンザル筋肉由来線維芽細胞の培養をDMEM/F12で行う事に決定した。筋肉組織辺を培地に入れてから線維芽細胞が出現するまでに約1ヶ月、その後、本課題で必要となる細胞数に増殖するまでさらに1ヶ月要する事が分かった。この間、特に培養開始後最初の2-3週間では、筋肉試料を無菌的に採取する事が出来ないためにコンタミネーションが生じる頻度が高く、細胞が出現しても実験に使用できなかったケースが多々生じた。そのため、筋肉試料収集時の消毒方法や培地に添加する抗生物質の条件を検討し、試料収集から初代培養細胞樹立までの条件を最適化した。現時点では汚染地域由来初代線維芽細胞3個体分、非汚染地域由来初代線維芽細胞2個体分の凍結保存に成功した。次年度以降の解析に使用するために、樹立した初代細胞のiPS化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野生動物試料から初代培養細胞の樹立に想定よりも時間がかかったが、樹立方法に目処がついたことで課題開始当初の状況から改善する事が出来た。初代培養細胞樹立に成功した個体数は少なかったが、当該年度に収集した野生ニホンザルの中で筋肉中放射性セシウム濃度が高い個体と非汚染地域の個体から細胞が樹立できたことで、今後の解析に供する最低限の試料を収集・作成する事が出来た。当該年度に定めた条件により、次年度以降はより円滑にすすめられることを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに定めた方法で筋肉試料から初代培養細胞を樹立し、福島原発事故後の経年変化を調べる事が可能となる試料の収集と作成を継続する。これまでに樹立できた細胞と、今後収集・樹立する細胞を用いてiPS化を進める。iPS化と並行して、初代細胞を用いてDNA損傷や酸化損傷の程度を評価する。作成するiPS細胞を用いて遺伝的不安定性の誘導についてスクリーニングを行い、誘発頻度が高い細胞においてはテロメアや中心体などの特定部位における異常について検討すると共に、酸化ストレスとの関連性について検討する。
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Research Products
(4 results)