2017 Fiscal Year Research-status Report
放射性セシウム沈着量の高位置分解能測定技術開発とマップ作成
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16K00543
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
後藤 淳 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (90370395)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所事故 / 走行サーベイ / 歩行サーベイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、指向性がある自動車走行サーベイシステムASURAを用いる事で広域の道路上における放射性セシウム沈着量調査を実施するとともに、新たに歩行用沈着量測定システムを開発し、自動車での測定ができない宅地や森林、農地などでの沈着量分布調査も行う。これらの調査を定期的に実施することで沈着量及び線量率の経時変化を明らかにしたいと考えている。 本年度も南相馬市全域の空間線量率分布調査を実施し、結果を公表した。南相馬市全域での調査は震災後これまでに6回実施したが、その間に除染やウエザリング効果、半減期による減衰によって着実に線量率は低下し、昨年度に続き本年度もほぼ全域でバックグラウンド程度になったので、今後は全域での調査は不要と判断し、代表的な地点での調査のみを実施することにした。 昨年度に引き続き、重点領域として定めた国道6号線にて10回を超える調査を実施するとともに、新たに常磐自動車道と国道114号線を重点領域に設定し定期的な調査を開始した。 ASURAの解析プログラムの改良により自動車速度パルスの考慮等による位置決定精度向上及び、繰り返し測定の足し合わせによる高精度調査データの取得が可能となった。また、ASURAの左向き検出器と同地点反対車線走行時の右向き検出器(この組み合わせは同じ方向を測定している)の計数率が検出器と線源の位置関係の違いよって変化(例えば、1個の点線源しかなければ距離の逆自乗則に従う)する事を利用して、道路に沿って路肩に帯状の線源があると仮定した場合の線源までの距離を推定する方法を開発した。 歩行用沈着量測定システムによる調査を山道にて実施し、ある地点において周囲よりも線量率が低くなっている原因(周囲より沈着量が少ない)を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自動車走行サーベイシステムASURAを用いた調査はほぼ予定通りに進んでいる。ASURA解析プログラムの改良により、過去に測定したデータも含めて位置精度を高めた結果が得られるようになり、線源までの距離の推定など新しくかつ独自の結果も得られている。ASURA関係については、論文のためのデータがそろってきたので、執筆作業も開始している。 歩行用沈着量測定システムの開発も順調に進んでおり、今後は現地調査データの蓄積に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した解析プログラムの改良によって精度向上が実現したが、まだ複数のプログラムに分かれている状態であり使い難いので、迅速な解析のため統一した解析プログラムにまとめる作業を行う。 森林内等ではGPS測位精度が不十分であるので、GPS以外の技術も使用を検討し測位精度の改善を目指す。歩行型沈着量測定システムの調査個所を増やし、その有効性を明確に示すとともに適用例を蓄積し、今後の普及推進の基盤とする。 調査を継続して実施し、これまでに実施した調査結果をまとめて経時変化の解析を行う。以前の解析では道路上の沈着量がほぼ半減期に従って減衰することを明らにしたが、より長い期間での解析を行うことでこの傾向が保たれているかどうかを確認するともに、左向きなどの計数率経時変化から、周囲の放射性セシウムの減衰傾向を調べる。
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Causes of Carryover |
本年度は当初予算額程度を順調に使用したが、前年度に検出器とパソコンを購入しなかった事により生じた繰越予算程度の額を次年度に繰り越すことになった。 次年度に歩行サーベイ用パソコン(USB-PD充電対応のものを用いる事で軽量化を図る)や測位精度向上のための機器(LIDAR)の購入費として使用する予定である。
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