2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00548
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
蔵重 智美 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (60568955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永山 雄二 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (30274632)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 甲状腺 / ROS / 発がん / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
「放射線被ばくで生じたRET/PTCは内部被ばくの場合、継続的な被ばくによりROS産生・レドックス反応が持続し、RET/PTCがさらに持続的に活性化される」という仮説を証明するために行った実験において、CHO細胞へのRET/PTC1遺伝子導入は成功し、CHO/RET PTC1細胞を作製することが出来た。しかし紫外線照射またはX線照射によるCHO/RET PTC1細胞の異常活性化については確認されなかった。 次に放射線照射により持続的に、さらに多くのROSを産生する可能性がある細胞および動物を検討した結果、オートファジー不全マウス(ATG5ノックアウトマウス)が考えられた。オートファジーを不全にすることで放射線照射により機能障害を起こしたミトコンドリアが細胞内で分解されず、ROSを通常よりも多く持続的に産生すると推測される。やがて高いROS産生を持続させることにより通常よりも多くのDNA損傷をひき起こし、結果としてゲノム不安定化、さらに癌化に至る可能性がある。このマウスを用いることで当初の目的であった放射線被ばくによる甲状腺がんの発症機構の解明に寄与できると考えられる。ATG5は全身でノックアウトすると生後早期に死亡してしまうため甲状腺特異的にATG5をノックアウトしたマウス(ATG5flox/flox;TPO-Cre)を作製し、実験に用いる。マウス作製後は今後の研究の推進方策に記したように基礎検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
紫外線照射またはX線照射によりCHO/RETPTC1細胞の異常活性化の確認に時間を費やした。具体的には紫外線やX線の線量、細胞株の変更、ウエスタンブロットの実験条件や使用する抗体の変更などを行い繰り返し検討したため、そのための時間を要した。さらに現在の実験系に続く新たな実験系を検討することとなり、研究の遂行に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線誘発性の甲状腺がん発症機構については不明な点が多い。我々は以前にin vitroのモデルを構築し、甲状腺の内部被ばく・外部被ばくの両方において被ばく時だけでなく被ばく後にも持続的で高いROS産生が起こり、この被ばく後のROSにより生じたDNA損傷や修復されずに残った染色体の異常が示された。この値はむしろ被ばく時の放射線自体の直接作用や瞬間的に生じたROSによる間接作用よりも高かった。実際に正常ラット甲状腺に外部被ばくさせた実験では、18ヶ月後に腫瘍が形成された。オートファジーの不全はROS産生が恒常的に起こることが考えられ、がんの形成や進展を加速させる可能性がある。今後は、胎生期から、あるいは生後から甲状腺特異的にオートファジー不全を起こしたマウスに放射線外照射を行い、甲状腺を経時的に解析することで細胞内のROS産生の増加が甲状腺の発がんに関与するかを解明することができる。 今後の計画 (1)基礎検討:オートファジーの不全が甲状腺に与える影響について…胎生期から甲状腺特異的にオートファジーが不全となったAtg5flox/flox;TPO-Creおよびコントロールマウスを生後4ヶ月で血清、甲状腺組織を採取し、甲状腺機能や組織による検討(HE染色、p62蓄積・DNA二重鎖切断・酸化ストレスマーカーの定量)を行う。(2)正常甲状腺に増殖刺激・抑制を与えた場合のオートファジーの変化の観察…C57BL/6マウスをコントロール群、メルカゾール・パークロレート投与群(増殖刺激)、T4投与群(増殖抑制)に分け、甲状腺機能や組織による検討を行う。(3)薬剤誘導性のオートファジーの促進・抑制に対する甲状腺機能についての検討…C57BL/6マウスをコントロール群、ラパマイシン投与群(オートファジー促進)、クロロキン投与群(オートファジー抑制)に分け,(2)と同様の検討を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)当初の研究計画に対して進捗に遅れが生じており、計画では使用予定であった試薬などの購入がなされていなかったために次年度使用額が生じた。
(使用計画)今年度の研究計画に従い、使用を予定している試薬等の購入に使用する。
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Research Products
(1 results)