2018 Fiscal Year Research-status Report
難修復性DNA損傷の細胞内可視化を目的とした光物理化学研究
Project/Area Number |
16K00551
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
赤松 憲 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 量子生命科学研究部, グループリーダー(定常) (70360401)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | DNA2本鎖切断末端 / Ku / チミングリコール |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、クラスターDNA損傷の一種である、2本鎖切断(DSB)の形状と修復関連タンパクであるKuとの親和性評価を中心に行った。まずは、既知のDSB構造をもつ人工オリゴDNA(50mer程度)を基質にして調べた。dsb構造は、平滑末端にものをコントロールとして、5'突出末端(4, 7, 10, 20塩基)、及び、チミングルコール損傷(Tg)を末端から6塩基離れた場所に入れたもの、とした。Kuとの親和性を調べた結果、20塩基突出末端のもの以外は平滑末端と殆ど同じ親和性で結合することが分かった。TgはDNAの外側にFlip outしやすいと思われ、Ku結合を阻害するのではと期待したが、そうはならなかった。DSB末端の形状や損傷の程度はKuの親和性に大きな影響を及ぼさないのかもしれない。 また、放射線で生じたDSBの末端構造の研究を進めるべく、放射線照射したpUC19(form I, II, III を含む)からDSBをもつ断片(formIII)を大量に分取する方法を確立した。様々な方法を試したが、最終的には、①アガロース電気泳動、②pUC19/SmaIマーカーのバンドを頼りにform IIIが含まれるゲルを切り出す、③電気溶出によりform IIIをゲルから出す、④ form III溶液を限外ろ過濃縮・buffer交換というプロトコルになった。簡便ではあるが、低線量ではどうしてもform Iの混入が避けられない。このプロトコルを2回行うことでpurityは上がるが、回収率が激減するリスクを伴う。form Iが多少混入した状態で今後の評価が可能か、これから検討していきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はDSBを研究ターゲットとした。Kuとの親和性に関し、予想とは違いDSBの構造はKuの親和性にほとんど影響を及ぼさないように見えた。重粒子線など高LET放射線で生じるDSBは修復されにくいとされ、その原因はDSB末端構造の複雑性であるという仮説があるが、Kuとの結合性、という切り口では、仮説の証明のための知見が得られていない。ただ今年度の知見から、新たな疑問、「DSB構造によるKu親和性に違いがないとしたら、非相同末端結合(NHEJ)によって再結合さえできないDSBってなんだろう?相同組み換え(HR)との兼ね合いは?」、「どれくらいバルキーな損傷であればKu結合が阻害されるだろうか?」などが生まれた。これらの疑問を今後の課題としていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
・放射線誘発DSB構造・形状の違いをFRET等、光物理化学的な方法で調べる方法を確立する。 ・放射線誘発DSBを含むDNA(formIII)を用いて、Ku等DSB修復関連タンパク質との相互作用を調べる。
|
Causes of Carryover |
重粒子線照射施設(TIARA)修理に伴い出張実験回数が減ったこと、試薬類とDNAオリゴマー外注費が、予定していたより少なかったこと、が主な原因である。次年度使用額と翌年度(H31)助成額を合わせた予算を用いて、蛍光標識・DNAオリゴマーの購入、実験用旅費、学会参加費、Ku等DSB修復関連タンパク購入等を予定している。
|
Research Products
(4 results)