2017 Fiscal Year Research-status Report
重イオン生物応答メカニズムのテーラーメードマイクロビーム照射による解析
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16K00552
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
舟山 知夫 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員(定常) (40354956)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロビーム / 重イオン / 高LET / 重イオンヒット効果 / バイスタンダー効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
高LET重イオンの生物作用機構を明らかにし、重粒子線がん治療の高度化や宇宙放射線影響リスク評価への適用に発展させていくため、重イオンマイクロビームを用いた生物照射実験を行う。 実験では、ラピッドプロトタイピングを用い、照射実験の要件ごとに最適化した形状の照射容器を開発することで、従来の手法では実現できなかった生物試料への重イオン照準照射を実現し、これを用いて、重イオンの生物照射効果の分子メカニズムを明らかにする。 平成29年度は、前年度までに導入したラピッドプロトタイピング技術を用い、従来のマイクロビーム照射容器では実現が難しい、バイスタンダー効果距離依存性を解析するために、100 mm以上離れた細胞への細胞間シグナル伝達を解析できるテーラーメードマイクロビーム照射容器の設計と製作を行った。製作した容器は、幅2mmの溝を迷路状に30mm×40mmのサイズに配置することで、最長240mmまでのバイスタンダー効果距離依存性を解析できる。容器はポリカーボネートのフレームと細胞接着面となるカバーガラスを組み合わせることで構成される。カバーガラス表面は真空プラズマ処理を行うことで、細胞接着性を向上させ、市販の細胞培養用シャーレと同等の細胞接着性を付与した。この容器を用い、重イオンマイクロビームを用いた細胞照射実験条件の検討を行った。容器にHeLa細胞を播種し、細胞接着面への細胞接着を確認した。この試料を重イオンマイクロビーム装置の試料台に設置し、細胞照準系による目的とする領域の照準が可能であること、また、細胞へのイオン数を制御した炭素イオンマイクロビーム照射を行うことが可能であることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択された研究計画で予定していた平成29年度の実施項目である、バイスタンダー効果の距離依存性を解析するためのテーラーメード容器の設計製作と、これを用いた細胞試料調製技術を確立することができた。一方で、マイクロビーム装置を設置した量研高崎研TIARAのサイクロトロンに不具合が生じ、全体の運転時間が減少したためにビームが必要となる実験を中心に計画の実施に一部遅れが出ている。これについては、オフビームで可能な技術開発を中心に計画の予定を進め、当初計画で企図した成果の実現に向けて計画を遂行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、これまでの研究で確立したバイスタンダー効果の距離依存性の解析を進めるとともに、これまでに得られた成果を取りまとめて原著論文として公表することで研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) H29年度計画で出席と成果の公表を予定していた第 13 回マイクロビーム国際ワークショップ (開催予定地:イギリス・マンチェスター市)が、5月に起きた爆発物事件の影響で中止となったため、計上していた国際会議出張旅費に差額が生じた。 (使用計画) H30年度に使用する成果公開費及び実験消耗品費として使用を予定している。
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Research Products
(6 results)