2016 Fiscal Year Research-status Report
ポリADPリボース加水分解産物を用いたDNA損傷性物質の定量的活性評価法の開発
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16K00562
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
高村 岳樹 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (50342910)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DNA損傷 / ポリ(ADP-リボース) |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリ(ADP-リボース)(PAR)は細胞内のDNA損傷に応じて生成する高分子である。そのためDNA損傷後のPARの生成量を測定することで,化合物のDNA損傷活性を定量的に評価できることが期待される。PARはアルカリフォスファターゼ(AP)などの処理により単位構造のリボシルアデノシン(R-Ado)まで分解されるため,細胞からPARを回収後,酵素的に加水分解処理を行い,目的とするR-AdoをLC/MS/MSにより分析する方法を検討した。細胞を過酸化水素で処理し,30分後に細胞を固定し,アルカリ処理を行いタンパク質からPARを脱離させた。さらにDNAse,RNAse, Proteinaseで細胞内高分子を処理し,得られた溶液をさらにフォスフォジエステラーぜ及びAPで処理を行い,LC/MS/MSで測定を行なった。しかしながら,この方法では目的とするR-Adoの検出を行うことができなかった。そこで,細胞内高分子を酵素で処理した溶液からPARを精製する処理を一段階加えることとした。既知文献を参考に,PARを含む溶液をmicroRNA精製カラムで精製し,その後,酵素的な加水分解処理を行うことで,R-AdoのピークをLC/MS/MS上で確認できた。そのため,細胞からのPARの精製が必要であることがわかったが,操作が煩雑であるため,今後より簡易化したプロセスを構築する必要がある。またLC/MS/MSで検出されたピークは,過酸化水素の濃度依存的にピーク面積値の上昇が観測されたため,DNA損傷の量に応じてPARの生成量が増加していることが示唆された。ピーク面積値と過酸化水素の処理濃度は正の相関を示したため,定量的な評価が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は細胞からのPARの回収を行うことが目的であった。PARの回収は精製操作が一段必要であることがわかり,基礎的な方法論は確立した。しかしながらより簡便なシステムの構築が必要である。また当初目的であったリボシルアデノシンの化学合成については,現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き化学的合成方法により、R-Adoを合成する。この合成には、既報が存在するため、文献に従い合成を行う。また、この方法で効率よく合成が可能であれば、15N-Adenosine を用いて、同様の方法で合成を試みる。同位体ラベルしたR-Ado が合成できれば、同位体希釈法による分析が可能となるため、より精密な定量分析が可能となる。 また細胞株のPARP 活性は大きく異なることが示されているBasal なレベルでPARP 活性の高い細胞株はDNA 損傷誘発時にもPAR が高生産するため,それらの細胞を選択することで,少ない細胞数でLC/MS/MS 分析が可能であり,かつ少量のサンプルで定量を行える。PARP 活性の高い細胞株としてA549,MCF7,HL60,HeLaなどが知られているので,これらのPAR 生成能について検討する。またPARP 活性の少ないとされるTK6(ヒト由来リンパ芽球細胞株)やJurkt(ヒト白血病T 細胞株)についても比較のため検討を行う。また,既往の変異原検出試験ではCHL(ハムスター肺細胞)やCHO(ハムスター卵巣細胞)またHePG2(肝細胞がん細胞)などが用いられているため、これらの細胞についてもPAR 生成能を検討し、相互比較できる細胞株を選定する。
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