2016 Fiscal Year Research-status Report
カドミウム腎毒性発現における新規のカドミウム毒性決定因子BIRC3の役割の解明
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16K00563
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
李 辰竜 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (80581280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳本 真紀 愛知学院大学, 薬学部, 助教 (90614339)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カドミウム / 腎障害 / ARNT / BIRC3 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
有害環境汚染物質の一つであるカドミウムは、腎臓をはじめ、骨、呼吸器、生殖器、循環器、胎児などに障害を引き起こすことが知られている。本研究では、345種の転写因子を対象とした網羅的検索を実施し、カドミウムによって活性が低下した転写因子のうち、ARNT転写因子がその細胞内レベルの低下に伴い、細胞生存率を減少させることも見いだした。さらに、カドミウムによってARNTの下流遺伝子であるBIRC3の発現が低下することも明らかになった。 カドミウムはBIRC3の遺伝子発現を顕著に抑制するとともに、細胞内タンパク質レベルも著しく低下させた。しかも、カドミウムによるBIRC3遺伝子発現抑制がARNT転写因子の活性抑制に起因していることが見いだされた。また、カドミウムはARNTの細胞内タンパク質レベルを低下させて転写活性を抑制することが示唆された。なお、BIRC3以外の7種のBIRC遺伝子ファミリーにおけるカドミウムの発現抑制作用は認められなかった。BIRC3のノックダウンによって細胞生存率の低下と、アポトーシスの誘導が示されるとともに、BIRC3のノックダウンによってカドミウム毒性も増強された。以上の結果より、カドミウムはARNT転写因子の活性抑制を介してBIRC3の遺伝子発現を抑制するとともに、細胞内タンパク質レベルを低下させ、その結果、細胞に障害を与えることが示唆された。カドミウムによるBIRC3遺伝子発現抑制はARNT転写因子の活性抑制に起因していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究目標は、「① ARNTの転写活性抑制作用を介したカドミウムのBIRC3遺伝子発現抑制の解明、② BIRC3の活性抑制がカドミウム毒性発現に及ぼす影響の解明、③ BIRC3を介したカドミウムの細胞死経路の解明」であった。現在までの研究から、腎近位尿細管上皮細胞において、カドミウムは、ARNT転写因子の活性抑制を介した発現低下により、BIRC3(アポトーシス抑制因子)の細胞内レベルを著しく低下させることが見いだされた。また、RNA干渉法によるBIRC3の発現抑制はカドミウム毒性を有意に増強させ、その経路にアポトーシスが関与していることが明らかとなった。 以上の成果は、当初の研究目標をほとんど達成するものであり、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、カドミウムのBIRC3発現抑制によるアポトーシス誘導作用におけるカスパーゼの関与やカドミウムによるシトクロームcの細胞質への放出に及ぼすBIRC3の関与を検討する。BIRC3はネクロプトーシス経路に関与することも知られている。また、BIRC3の細胞内レベルが減少した場合、RIP kinase1とRIP kinase3が複合体を形成することによってネクロプトーシスを誘導することも知られていることから、カドミウムによるRIP kinase複合体形成に及ぼすBIRC3の影響を検討し、BIRC3発現抑制を介したカドミウム毒性発現におけるRIP kinaseの役割を明らかにする。 また、カドミウムによるARNTの核への局在性、転写複合体の形成、ARNT転写因子の修飾を検討し、カドミウム標的転写因子ARNTの活性調節機構の解明する。 さらに、カドミウム長期曝露マウスの腎臓において、ARNTの転写活性おとびBIRC3の発現に及ぼすカドミウムの影響を、EMSAキットを用いたゲルシフトアセイおよびリアルタイムRT-PCR法を用いて検討し、カドミウムの腎毒性発現の標的分子機構を証明する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に、遺伝子ノックダウン法による感受性検討実験が計画通り行われた場合、阻害剤を用いた検討を予定したが、遺伝子ノックダウン法を用いた上で、当初目標が達成され、阻害剤を用いた検討が不要となり、等実験に必要な物品を購入しなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では、多量の抗体を用いた実験が計画されており、主に抗体購入のため使用する計画である。
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