2016 Fiscal Year Research-status Report
大気環境観測衛星データに基づく大陸からの越境大気汚染による児童健康リスクの評価
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16K00571
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
渡部 仁成 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (80397851)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PM2.5 / 児童 / 健康影響 / 越境大気汚染 / 呼吸機能 / 呼吸器症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の東アジア地域の急速な発展に伴い大気汚染が深刻化し、本邦でも汚染空気塊(越境大気汚染)の流入による健康影響が懸念されている。近年になり大気汚染を人工衛星を用いて観測できるようになってきた。本研究はPM2.5、黄砂の児童への健康リスクを評価し、その健康リスクが越境大気汚染の流入により増悪することがないか、大気観測人工衛星データ MODISのデータを活用して検討する。また、越境大気汚染流入に伴いPM2.5、黄砂の毒性がどのように変化するかについても、炎症性サイトカイン産生を測定することで評価する。最終的には、疫学調査結果と基礎研究結果を融合させ越境大気汚染の児童への健康リスクを明らかにすることを目的に行う。PM2.5、黄砂の健康リスクは、児童の呼吸機能および呼吸器症状とPM2.5、黄砂の関係を評価する事で行う。大陸からの越境大気汚染の流入が、本邦におけるPM2.5の健康影響についてどのように影響しているか検討した研究はほとんどなく、越境大気汚染が児童の健康に与える影響について調査するのは本研究が初めてである。 小学校児童を300名を調査対象にした。喘息およびアレルギー性鼻炎のある児童はPM2.5、黄砂の影響を受けやすい可能性があり、喘息とアレルギー性鼻炎の有無を同意取得時に調査した。2017年1月から2月に毎日ピークフローメーターを用いて呼吸機能測定を行った。また、同様に毎日咳と痰の有無とともに、咳と痰がある場合にはその程度を記録し呼吸器症状についてもモニタリングを行った。この調査期間に1マイクロメートル以下の浮遊粒子を24時間毎に採取した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するのに必要な、小学校児童を対象にした呼吸機能と呼吸器症状のモニタリングを実施できた。また、同時期のPM1の採取を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査を実施した呼吸機能と呼吸器症状のモニタリングのデータ入力を行う。また、採取した24時間毎のPM1をヒト気道上皮細胞、ヒト単球に曝露させ、刺激培養後の培養上清中炎症性サイトカイン濃度を測定する。また、採取したPM1のエンドトキシン濃度を測定する。PM2.5、黄砂粒子、二酸化硫黄、窒素酸化物、オゾンが呼吸機能と呼吸器症状を増悪させているか線型混合モデルにより解析する。同様に測定した炎症性サイトカイン濃度との関連も解析する。 衛星データを元に大陸からの大気汚染流入がある日を同定し、大気汚染流入のある日とない日とで呼吸機能、呼吸器症状を比較する。同様に、PM1による炎症性サイトカイン産生の相違についても検討する。 調査に協力を頂いている児童、保護者、小学校の同意を得られれば更に調査期間を拡大する。また、児童の病欠人数および病欠の原因調査を行い、PM2.5、黄砂の児童への健康リスクを病欠によっても評価することを試み、越境大気汚染が児童の病欠に影響しているか検討する。
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