2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00579
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
三浦 一芸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター 生産環境研究領域, グループ長 (10355133)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 保全生態 / 生物農薬 / 土着天敵 / 共生微生物 / Wolbachia |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は市販の生物農薬の生態系への影響について調査することである。調査対象はこれまでに大量に人為的に放飼されている生物農薬タイリクヒメハナカメムシとする。ただ、タイリクヒメハナカメムシは生物農薬による大量放飼という生態系への影響だけではない重要な問題を保持している。それは細胞質不和合を引き起こす共生微生物ボルバキアに感染していることである。細胞質不和合ボルバキアによる選択的排除が起こり、ミトコンドリア遺伝子の多様性が低下する可能性がある。また、タイリクヒメハナカメムシだけでなくボルバキア自身の分布構成も変える。そこで、本研究の目的は生物農薬タイリクヒメハナカメムシが既存の土着生態系でくらしているヒメハナカメムシの個体群密度・遺伝的多様性に与える影響を最新の生態学的・集団遺伝学的手法を用いて調査することである。そして、その結果は市販の生物農薬の生態系リスクと対策を提言する基礎知見として期待される。 本年度は昨年度同様「生物農薬タイリクヒメハナカメムシは生態系に影響があるか?」を解決するために遺伝的構造の解析および個体の由来解析のためサンプリングと遺伝子解析を行った。具体的には、まず生物農薬タイリクヒメハナカメムシの遺伝子がどれだけ野外個体群に浸透しているかを把握するために高知県での生物農薬放飼情報をもとに設定した放飼地域と無放飼地域で野外個体のサンプル採集を行った。注意したのは施設の中ではなく確実に野外の状態である場所を選んで採集を行った。次に採集したサンプルの核遺伝子(マイクロサテライト)およびミトコンドリア遺伝子(COI領域)についてマイクロサテライト解析およびシーケンス解析を行った。結果として例えばCOI遺伝子が過去の論文や予備調査結果とかなり違うことがわかり興味深いデータを得られている。解析は順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、選定した複数の放飼地域と無放飼地域で野外個体のサンプル採集を行った。さらに遺伝子解析も順調に進んでいる。ただ、一部年度内に解析が間に合わなかった部分もあるが、全体としての影響は軽微であり、概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
特に問題はなく、計画書通り実施可能である。最終年度は解析に足りないサンプルを採集しすべての遺伝子解析を行う。また、得られた結果を論文化していく。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初予定していたDNA解析が実施できなかったため、その解析用試薬を次年度に繰り越した。 (使用計画) 昨年度未実施となったDNA解析を実施する。具体的には、一部サンプルのマイクロサテライト解析を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)