2016 Fiscal Year Research-status Report
Development of toxic cyanobacteria bloom controller and optimization of control parameters
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16K00584
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
朴 虎東 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (20262686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 勝紀 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (70633494)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アオコ制御装置 / 有毒アオコ抑制 / 振動波発生装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
富栄養な水域に発生する藍藻は景観の悪化だけではなく、二次代謝産物による悪臭や毒素の問題も引き起こす。したがって、様々な藍藻除去法が研究されているが、処理後に毒素が溶出されたなどの新たな問題が現れる。藍藻は他の藻類に比べて、乱流混合に弱いため、本研究では 振動発生装置を用いて、藍藻の成長阻害の効果を調べた。 実験は27±3°C、10±3 µmol m-2 s-1で10日間行った。吸光度(OD405nm)とChl.aで細胞密度を測定し、フローサイトメトリーを用いて細胞サイズ変化を確認した。さらに、振動発生装置による細胞損傷に起因するmicrocystin (以下MCと略す)溶出の影響を調べるために細胞内・外のMC-LRの定量分析を行った。振動発生装置による成長阻害のメカニズムを調べるために透過型電子顕微鏡(以下TEMと略す)によるMiccrocystis細胞の観察を行った。 処理無しの対照区と攪拌子区は時間経過に伴って細胞密度が増加したが、振動発生装置区の実験期間中には成長が見られず、Chl.aと細胞内MC-LRでも類似な傾向が示された 振動発生装置の処理による細胞損傷の影響を調べるために細胞外MC-LRを測定した結果、対照区を含むすべての実験区で検出限界以下だった。 さらに、成長阻害のメカニズムを調べるためのTEM観察の結果は、対照区で細胞の内部構造が鮮明にあることに比べ、振動発生装置区の細胞ではガス胞の構造が大幅に減少され、代わりに空洞が多く観察された。また、対照区に比べて、チラコイドの構造が明確に観察されなかった。 これらの結果に基づいて、振動発生装置の処理は、Microcystisの細胞膜を損傷せず、細胞内部のみの影響を及ぼすため、藍藻毒MCの溶出を引き起こさずにMicrocystisの成長を阻害できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水平と斜めの2つの翼で構成される直径約3.5 cmのシリコン製の振動発生装置を用いた。この装置は攪拌方向によって、水の流れや攪拌様子が異なる特徴を持っている。 振動発生装置による藍藻の成長阻害効果を確認するために、処理無しの対照区、振動発生装置区、攪拌の影響を確認するための攪拌子区を用いた。約7 L規模のアクリル製の水槽に、6 LのMicrocystis aeruginosaの培養株を用いた。 実験は27±3°C、10±3 µmol m-2 s-1で10日間行った。吸光度(OD405nm)とChl.aで細胞密度を測定し、フローサイトメトリーを用いて細胞サイズー変化を確認した。さらに、振動発生装置による細胞損傷に起因するmicrocystin (以下MCと略す)溶出の影響を調べるために細胞内・外のMC-LRの定量分析を行った。振動発生装置による成長阻害のメカニズムを調べるために透過型電子顕微鏡(以下TEMと略す)によるMiccrocystis細胞の観察を行った。 処理無しの対照区と攪拌子区は時間経過に伴って細胞密度が増加したが、振動発生装置区の実験期間中には成長が見られず、Chl.aと細胞内MC-LRでも類似な傾向が示された。したがって、振動発生装置の処理によって、Microcystisの成長が阻害し、これは攪拌の影響では無いと言える。これらの結果に基づいて、振動発生装置の処理は、Microcystisの細胞膜を損傷せず、細胞内部のみの影響を及ぼすため、藍藻毒MCの溶出を引き起こさずにMicrocystisの成長を阻害できることから、本研究が順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、1トン規模の水槽で稼動できるような装置の設計と製作を行い、アオコ制御実験を行う。 1トン水槽に、人工的にアオコを発生させ「水中振動波発生装置」のアオコ抑制に最適な稼動条件を確立させるための制御実験を数回行う。ここでも、ハイドロホンアレイシステムを用いて、振動波がアオコに与える機械的ストレスを計測する(水野)。アオコの抑制実験には、アオコが発生している湖沼からアオコを持ち込み実験を行うことと、有毒藍藻Microcystis aeruginosa株を用いて室内大量培養を行い実施する予定である。アオコの抑制有無に関しては、Microcystis aeruginosa細胞の計数と光合成色素測定を行いその結果から判断する。また、アオコ毒素の動態についても解析を行う。 アオコ抑制装置の設計 小規模アオコ抑制実験結果を総合して、アオコが発生しているため池、または大学構内の防火水池に稼動実施可能な装置の設計を行う。また、FDTD(Finite-Differential Time-Domain)法を用いて、圧力分布シミュレーションを行い、装置の配置を検討する(水野)。アオコ抑制装置に振動波発生装置と酸素発生装置などを組み合わせて、装置(試作品)の完成を目指す。 防火水池のアオコ抑制実験 構内の防火水池(約50トン規模)にアオコを発生させ、アオコ抑制装置による、アオコ抑制有無の調査を定期的に行う。物理化学的環境要因の観測と共に、池全体の栄養塩類の物質収支を計算できるような観測と分析を行い、汎用性のあるアオコ抑制装置の完成を目指す。
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Causes of Carryover |
年度内に消耗品を購入する予定であったが、輸入品であることから納品に時間が掛かるので次年度に購入を繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度請求額と合わせて消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(1 results)