2016 Fiscal Year Research-status Report
下水からのリン・アスタキサンチン同時回収のための微細藻類培養技術の開発
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16K00585
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
永禮 英明 岡山大学, 環境管理センター, 准教授 (60359776)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 廃水処理 / 微細藻類 / 藻類細胞 / リン回収 / 下水道 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は藻類細胞からのリン回収試験を中心に研究を実施した。人工培地にて培養したHaematococcus pluvialis(NIES-144,国立環境研究所から分与)を用い,細胞の破砕条件,破砕細胞からのリン,アスタキサンチンの抽出条件について,特にリンの抽出に注目して検討した。破砕と抽出は,ガラスビーズを用い同時に行い,破砕時の破砕強度,破砕時間,途中の冷却回数を変化させた。破砕強度が強すぎる場合,破砕容器内部の温度が上昇し沸騰するケースもあった。アスタキサンチンの熱による変化を防止するために適切な破砕・抽出条件が必要である。 充分に増殖した細胞に白色LEDの強光を与え,アスタキサンチンの生産を誘導した。この細胞を遠心分離により洗浄・濃縮を行った。ただし,この過程で失われるリン量が無視できない量であったため,洗浄に使用する溶液についても検討を行った。その結果,生理食塩水,または河川水を想定した希薄食塩水(0.05% NaCl溶液)を使用することでリン損失を抑制できた。 破砕強度,破砕時間については,破砕強度が強いほど,破砕時間が長いほどリンの抽出率は高く,破砕強度を5×10^3 rpm,破砕時間を1,200 sと決定した。次に,1,200 sの破砕時間中に何回の冷却を行うかを検討した。2~6回という条件の中ではリン抽出率に違いは見られなかった。さらに,抽出されたリンの回収方法を検討し,抽出液中リンをリン酸カルシウム沈殿として最大72%の率で回収できた。 最後に,培養細胞の洗浄・濃縮過程から始まる一連の操作におけるリンの収支を把握した。細胞に含有されたリンのうちリン酸カルシウムとして回収されたリンは17%,抽出されたものの沈殿として回収されないものが7%,洗浄・濃縮過程での損失が10%,その他,固形物中に残留したものなどが66%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞からのリン・アスタキサンチンにおいて,細胞からのリン抽出率が想定よりも低くとどまっている。H. pluvialisの細胞壁は強固であるため物理的な破砕を行っているが,それでも十分な破砕ができていない可能性がある。しかしその一方,実験ではいずれのサンプルからもごく僅かのアスタキサンチンしか検出されていない。リン抽出に注力したために破砕が強くなりすぎ,アスタキサンチンの回収率低下を引き起こすトレードオフが生じた可能性もある。 細胞からのリン・アスタキサンチン回収工程は,本研究で目指す微細藻類を用いた下水からのリン回収・明日体キサンチン生産の重要な工程であるため,本課題の克服は重要課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度にはリン・アスタキサンチン回収について,細胞の構造,リン・アスタキサンチンの物性と溶媒との親和性とに注目し,理論的な考察を充分に行った後に実験を実施し,当初目標の達成を目指す。 また,これと並行してH. pluvialisの安定培養のために必要な雑菌繁殖防止技術の確立を行う。強制的に酸化条件を与えることで雑菌繁殖を防止しようとするもので,すでに培養槽のプロトタイプまで作成済みである。
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