2017 Fiscal Year Research-status Report
環境に配慮した工程短縮型高精度歯車加工法-振動歯切り加工法の開発-
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16K00591
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Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
軽部 周 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (70370054)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境負荷低減 / ドライ加工 / 歯車 / 高硬度鋼加工 / 工作機械 / 振動切削 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「環境負担が少なく経済性・生産性の高い高精度ドライ歯車加工法の開発」である.本課題では,(1)ホブ振動歯切り装置の有する加工温度・切削力低減効果の定量化およびメカニズム解明,(2)工作物を振動させる工作物振動歯切り装置の新規開発,の2点を研究目的としている. (1)ホブ振動歯切り加工のメカニズム解明の一環として,前年度考案した振動ホブ機構の力学モデルによる考察および実験より,ホブ振動歯切り装置の最適加工条件について検討した.その結果,本加工装置の安定性はホブ振動機構の振動数に依存すること,工具振動数を決定した後に工具振幅を変化させることで最適加工条件が得られることを明らかにした.また,ホブ振動速度と加工面の関係から,ホブ振動速度の増加に伴い加工面粗さが向上する傾向がみられるが,ホブ振動速度が一定値を超えると加工面粗さが増加傾向に転じるため,加工条件には限界が存在することを明らかにした.次に加工温度低減効果の定量化について,前年度考案した熱放射温度計による間接測定法を用い,加工温度測定実験を行った.切込み深さと加工温度の関係から,歯たけの約13%の切込み量を境界として加工温度の増加傾向が変化することを明らかにした.本成果は国際会議ISEM17にて発表した.切削力低減効果の定量化については,実験準備段階である. (2)工作物振動歯切り装置の新規開発について,申請時に構想した「工作物をアームによりホブ送り方向に強制振動させる実験装置」が完成した.また,本装置により,歯車の歯すじ方向の右歯面粗さが約1/5に向上する結果が得られた.本装置は,皿ばねに与える与圧により加工特性が変化するため,加工条件について更に検討する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は主に,(1)ホブ振動歯切り装置のメカニズム解明(振動機構の最適化の検討)および加工温度低減効果の定量化,(2)工作物振動歯切り装置の新規開発,の二点について研究を行った. (1)のホブ振動歯切り装置は,「工具(ホブ)」に強制振動を与えながら行う歯車加工装置であり,前年度,振動機構のモデル化を行った.今年度は,実験およびモデル考察により,ホブ振動歯切り装置の最適加工条件について検討した.ホブに与える振動数と振幅を変化させ,歯面粗さ,歯形誤差,歯すじ誤差を用いて評価した結果,振動数740Hzのとき加工品質が安定すること,このときの最適加工条件は振幅1.8μmであることがわかった.本加工装置の安定性は工具振動数に依存すると考えられるため,最適条件の決定は,工具振動数を決定した後に工具振幅を決定するという手順が望ましいとの知見が得られた.また,歯すじ方向歯面粗さはホブ振動速度の増加に従い減少するが,ホブ振動速度が9200μm/sを超えると増加傾向に転じるため,振動加工の限界が存在すると考えられる.以上から,目標である「ホブ振動歯切り装置のメカニズム解明」について具体的なパラメータの最適値,最適化の手順および加工限界について示すことができた. (2)の工作物振動歯切り装置は,「工作物(ワーク)」に強制振動を与えながら行う新しい歯車加工装置である.今年度は,当初構想した,工作物直下に設置したアームにより工作物を上下させる機構が完成した.また,本装置により歯車の右歯面粗さが約1/5に向上するという結果が得られた.以上から,目標である「工作物振動歯切り装置の新規開発」がおおむね達成できた.ただし,現状,左歯面粗さが悪化する現象が確認されているため,振幅,振動数などの加工条件について再検討が必要である. 以上の理由から,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)切削力低減効果の定量化:ホブ振動歯切り加工装置の切削力推定法について検討する.当初考案した,ホブアーバのねじり振動測定による切削力推定法の実現を目指し,実験を行う.ホブアーバは通常,スペーサに覆われており,当初考案していた回転センサによる直接のねじり振動測定は困難である.解決法として,切削中のホブ自体のねじりを測定すること,ホブアーバとスペーサを堅くキー結合した状態でスペーサの回転を測定することが考えられる.これらの手法でうまくいかなかった場合は,ホブアーバに歪みゲージを貼り付け,ねじりを直接測定することを考える.歪みゲージによる切削力測定は一般的な歯切り加工装置(ホブ盤)に対し実績のある手法であるが,ホブ振動歯切り加工装置の構造上,歪みゲージの信号線を引き出すスリップリングの設置ができないため,本課題構想時は候補から外していた.現在,ラズベリーパイなどの組込み用の小型コンピュータが発展・普及してきたため,回転するホブアーバにこれらの計測機器を搭載する,または無線で情報を飛ばすなどの手法により歪みゲージによる測定が実現できる可能性がある.さらに,工作物をバネ支持し,加工中の工作物の振幅を測定することで切削力を測定する手法も考えられる. (2)工作物振動歯切り装置の最適化:工作物振動歯切り装置について,更に詳細な実験データを取得し,学会発表および論文化を行う.また,同装置の最適化について検討を行う. (3)振動歯切り装置の小型化:小型の加振器を導入し,本研究手法をCNCホブ盤に実装するためのコンパクトな加工装置を設計する.本研究で開発した「ホブ振動歯切り装置」「工作物振動歯切り装置」の実用化には,これらの装置を簡便にCNCホブ盤に設置できることが必要である.本研究では,これらの装置の小型化について検討し,研究協力者および工作機械メーカーの助言を受けながら開発を進める.
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