2017 Fiscal Year Research-status Report
微生物由来物質が誘発する海藻タンパク質発現変動の解明と水圏環境浄化への利用の研究
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16K00596
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
垣田 浩孝 日本大学, 文理学部, 教授 (40356754)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海藻 / 水圏環境浄化 / 海洋資源 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に新規調製したオゴノリ科海藻単藻培養株のエアレーション培養を行い、平成29年度を通じて当該単藻培養株を継続的に使用できる状態を保つことに成功した。海藻の単藻培養株化は個体差の最小化のために重要である。当該単藻培養株は16週間の連続培養実験でも成熟せず、本株が非成熟性単藻培養株であることを明らかにした。非成熟性単藻培養株は成熟・枯死しないため水質浄化に適している。保存培養6週目と保存培養12週目で海藻の湿重量増加量、栄養塩吸収量、免疫増強成分量に有意な差は検出されなかったことから当該培養株は一定期間培養した後は、培養経過時期に関係なく水質浄化等に利用可能であることを明らかにした。インドール-3-酢酸(IAA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、6-ベンジルアミノプリン(BA)を比較し、オゴノリ科海藻頂端の成長加速効果はIAAが最も高いことを明らかにした。一方、IAAはオゴノリ科海藻の再生を阻害することも見出した。またIAAで成長加速したオゴノリ科海藻からタンパク質画分を抽出し硝酸還元酵素活性を検出可能であった。このことからIAA添加が硝酸還元酵素活性へ及ぼす影響を検討することが可能になった。光合成の二次代謝物質であるカロテノイドへのIAAの影響を調べるために逆相HPLCによるカロテノイドの簡易分析法を検討した。植物からのカロテノイド抽出は、その植物材料により最適な方法が異なるため、海藻からのβ-カロテンの抽出条件の詳細な条件検討から取り組んだ。酸化防止剤含有の有機溶媒を抽出溶媒として用いる方法を開発し、海藻カロテノイドの高効率抽出及び抽出カロテノイドの安定性向上を達成した。開発したカロテノイド分析法は微生物由来物質(IAA)等による海藻カロテノイドの変動解析に利用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に紅藻類オゴノリ科大型海藻の清浄な単藻培養株の構築に成功し、平成29年度も当該株の培養を継続的に実施し、本株の維持を続け、平成29 年度を通じて実験材料として本株から調製した頂端切片や頂端近傍の中間切片を本研究で使用することができた。これらの切片を用いて微生物由来物質(indole-3-acetic acid: IAA)等が海藻代謝変動に及ぼす影響を解析することが可能となった。また本単藻培養株の16週間連続培養実験により、非成熟性であることを明らかにした。単藻培養株は藻類として1種しか含まれていない株であるためコンタミが少なく、かつ個体差の最小化ができ、本研究のような生体物質の変動解析実験での実験材料として適している。さら非成熟性単藻培養株は成熟・枯死しないため代謝変動解析や水質浄化利用に適している。保存培養初期と保存培養期間内で海藻の湿重量増加量、栄養塩吸収量、免疫増強成分量の比較を行った。インドール-3-酢酸(IAA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、6-ベンジルアミノプリン(BA)が及ぼすオゴノリ科海藻頂端の成長への影響を比較し、IAAが最も有効な成長加速効果があることを明らかにした。窒素代謝酵素の一つである硝酸還元酵素の活性をIAA添加培地で生育したオゴノリ科海藻から検出できた。また代謝物質であるカロテノイドを海藻から高効率で抽出し、安定に分析できる前処理法を含めた簡易分析法の開発に成功した。以上の成果が得られたことから区分(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
実施計画に基づき研究を以下のように実施予定である。Indole-3-acetic acid(IAA)等の微生物由来物質等の摂取の海藻タンパク質発現への影響を評価するために単藻培養株(大型海藻として単一種の状態の株)まで純化した海藻を用いる必要がある。そこで昨年度に引き続き今年度も平成28年度に新規調製したオゴノリ科海藻単藻培養株を本研究実施期間全般にわたって使用可能にするため、本海藻の保存培養(培地交換は約2週間に1回)の維持を継続し、平成30 年度を通じて実験材料として本株から調製した頂端切片や頂端近傍の中間切片を本研究で使用可能にする。微生物由来物質(IAA)等の添加による非成熟性オゴノリ科海藻単藻培養株の海藻タンパク質変動を二次元電気泳動等により解析し、IAA等により活性化される代謝物質等(酵素等)に関する情報を獲得する。代謝産物である糖、カロテノイドの変動に関しても情報を収集する。獲得した情報を基に高成長量、高栄養塩吸収能を持つ海藻を調製するのに最適な微生物由来物質等を推定する。微生物由来物質(IAA)等の添加及び無添加で培養した海藻の栄養塩吸収能力及び酵素活性測定を行う。高成長量、高栄養塩吸収能を持つ海藻を調製するのに最適だと推定された微生物由来物質等の添加が誘発する海藻タンパク質発現変動が微生物由来物質等の添加後、いつまで継続するのかについても検討する。これらの知見を総合し、高成長量、高栄養塩吸収能を持つ海藻を調製するための最適培養条件を選定する。
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Causes of Carryover |
(理由)試薬に関して想定していた金額よりも見積額の方が低かったため当該金額が生じた。 (使用計画)次年度以降の研究において有効に使用する予定である。
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