2017 Fiscal Year Research-status Report
ゼオライトおよびハイドロタルサイトの複合化によるリンおよび窒素同時除去材の開発
Project/Area Number |
16K00601
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩見 治久 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 准教授 (60215952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩野 剛司 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 准教授 (30178850)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | ゼオライト / ハイドロタルサイト / 層状亜鉛水酸化物 / イオン交換 / 資質浄化 / リン除去 / アンモニア除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,樹脂マトリックス中にゼオライトおよびハイドロタルサイトが分散した複合体の作製において,(1)樹脂中へのゼオライト,ハイドロタルサイト粉末の分散性の改善,(2)ゼオライト,ハイドロタルサイトの粒子径の最適化について検討した.混合方法に超音波分散および撹拌型ミキサーを用いて比較した結果,撹拌型ミキサーを用いた場合に混合に均一性の向上が見られ,リン酸イオンの除去率は60%から75%まで向上したが,アンモニウムイオンの除去率は40%から45%までの向上であった.そこで,市販のゼオライト(粒子径:75μm)を遊星ミルで30μm,10μm,5μmまで粉砕した結果,5μmではアンモニウムイオンの除去率が65%まで向上した. 水酸化アルミニウムあるいはメタカオリンおよび水ガラスを主原料とするゼオライトAの固化体の作製において,ハイドロタルサイトを添加した複合固化体の作製条件を検討した.ゼオライト前駆体スラリーとハイドロタルサイト粉末との混合条件が非常に重要になるため,撹拌型ミキサーでの混合を検討した.ハイドロタルサイトの組成については,ゼオライト前駆体スラリーのpHが高くなるため, 市販のMg-Al系を選択し,層間に塩素イオンを含むものについて検討した.なお,ハイドロタルサイトの混合割合は,Z/H比が1/0,0.75/0.25,0.5/0.5,0.25/0.75,0/1とし,最適比率を調査した.その結果,Z/H比が0.5/0.5までは安定した固化体が調製できたが,それ以上にハイドロタルサイトの含有量が多くなると固化体の強度が極端に低下した. Z/H比が0.5/0.5の場合,アンモニウムイオンおよびリン酸イオンの除去率は75%および70%であった.なお,硬化体には過剰のNaOHが含まれるため,洗浄が必要であることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
28年度のからの継続項目である,樹脂中にゼオライトおよびハイドロタルサイトが分散した複合体の作製において,分散方法,ゼオライトの粒子径の影響についてはほぼ確認が終わり,基本的な配合割合,原料粉末の粒子径および混合方法を決定することが出来た.樹脂を用いた複合体の作製においては,層間に塩化物イオンを含むハイドロタルサイトを用いたが,ゼオライトおよびハイドロタルサイトの陽イオン,陰イオン除去後の再生条件の決定,複雑形状への展開へまでは至らなかったため次年度の課題として持ち越すことになった. ゼオライト-ハイドロタルサイトの複合固化体の作製条件の検討においては,水酸化アルミニウムあるいはメタカオリンを出発原料として検討したが,水酸化アルミニウムを用いる場合には,ジオポリマー反応を促進させるための前処理(メカノケミカル処理)を安定して行うことが出来ず,試料作製条件の決定に多くの時間を費やす結果となった.したがって,安定した複合硬化体を得るために,水酸化アルミニウムを出発原料として用いる手法は断念し,メタカオリンあるいはシリカフュームを用いたゼオライトの作製を検討し直したため,本年度は,ハイドロタルサイトの配合比率の決定までしか行うことが出来なかった.また,ゼオライト作成時の過剰なアルカリ成分の溶出が,アンモニウムイオン,リン酸イオンの除去率に大きな影響を及ぼすことが明らかになった.そのため,複合硬化体作成後にアルカリを除去するための洗浄が必要となることが明らかになり,洗浄条件とリン酸イオンおよびアンモニウムイオンの除去能の関連性を詳細に検討し,最適な洗浄条件の決定は出来た.さらに,複合固化体作成に用いた市販のハイドロタルサイト層間の炭酸イオンを除去する必要があり,熱処理温度とリン酸イオンの除去率の関連性を検討し,最適熱処理条件を決定することが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
ゼオライトおよびハイドロタルサイト粉末-樹脂複合物については,平成29年度の研究計画の内,未検討の状態で残っている以下の点について早急に検討する.(1)ゼオライトおよびハイドロタルサイト粉末-樹脂複合物の複雑形状体への展開,(2)ゼオライト,ハイドロタルサイトの再生の検討. (1)については,ハニカム状,パイプ状成形体の可能性について検討する.樹脂と混合するハイドロタルサイトは層間に塩化物イオンを,ゼオライトは細孔内にナトリウムイオンを含み,これらイオンのイオン交換能を利用している.そのため,陰・陽イオン除去を繰り返すと除去能が低下する.そのため,ゼオライト,ハイドロタルサイトの再生処理が必要となる.(2)では,高濃度のNaCl水溶液,あるいはHCl-NaClの混合水溶液での再生処理を検討する. ゼオライト-ハイドロタルサイトの複合固化体については,ハイドロタルサイト粉末の粒子径が固化体の強度,リン酸イオンの除去能に及ぼす影響について検討する.遊星ミルで粉砕した粒子径の異なるハイドロタルサイト粉末とゼオライトとの配合割合を変えた複合固化体を作成し,強度,リン酸イオン除去能を測定することにより,ハイドロタルサイトの最適粒子径を決定する. また,固化体は通常,直径10 mm,厚み5 mmで作成するが,陽・陰イオンの除去に対しては固化体表面と溶液との接触面積が大きいほうが有利である.そのため,得られた固化体を粉砕し,1-2 mm,2-3 mm,3-5 mmの大きさに分級したものについて陽・陰除去能を検討する. なお,固化体を洗浄することで,排水のpH上昇を抑制するが,Mg-Al系ハイドロタルサイトを用いている関係上,洗浄した場合でもpH9以下にすることが難しい,そこで,ハイドロタルサイトの代替品として,層状亜鉛水酸化物についてもゼオライトとの複合化を検討する.
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Causes of Carryover |
(理由)本研究課題の採択が,半年遅れの10月であっため,28年度実施予定の項目が29年度にずれ込む結果となった.また,ゼオライト-ハイドロタルサイト複合固化体の作製において使用原料の決定など,当初の予想より検討が長引いた項目があったため,本年度の研究計画の一部は次年度への持ち越しとなった.そのため,29年度費用を繰り越すほうが,次年度の研究においても有利と考えた.そのため,本年度に配分された研究費の一部を次年度の研究費と合算して使用するため,次年度に繰り越すこととした.
(使用計画)設備備品としては,ハイドロタルサイトの層間イオンの交換,層状亜鉛水酸化物の合成に必要な高速遠心分離機(コクサン,H-201F)ダイヤフラム型真空ポンプ(株式会社KNFジャパン製・N840.3FT.18),消耗品としてはゼオライト,層状亜鉛水酸化物合成に使用する耐圧ステンレス容器,pH電極,ダイヤモンドカッター替え刃および原料,試薬の購入に使用する.今年度も,昨年度と同様,樹脂-無機粉末複合体関連と,ゼオライト-ハイドロタルサイト複合固化体関連の研究を並行して行うため,両検討項目のための原料および試薬,測定用消耗品を購入する.
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