2016 Fiscal Year Research-status Report
都市河川・湖沼への抗生物質拡散と環境微生物生態系への影響を評価する
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16K00604
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
西川 可穂子 中央大学, 商学部, 教授 (20345416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 孝昌 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 室長 (30226526)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 抗生物質 / 細菌叢 / 環境毒性 / メタゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
医療や農業・畜産分野での抗生物質の使用の結果、河川等へ抗生物質が拡散することが危惧されている。世界各地で薬剤耐性菌が環境中の河川や池から分離されているが、日本では環境中における薬剤耐性菌の報告が少ない。そこで、本研究ではまず都市東京近郊の河川・湖沼の水環境中における薬剤耐性菌の分布を調査し、更に、メタゲノム解析により水試料におけるDNAから微生物の多様性についても同時に調査を行い、微生物生態系へ薬剤耐性が影響していないかを検討することを目的とした。現在までに以下の点が明らかとなった。 1)薬剤耐性菌の分離と薬剤耐性結果 多摩川を中心とした東京近郊にある河川10サンプリングポイントと公園の池4サンプリングポイントにおいて水試料を採水し、標準寒天培地に塗布後、48株を分離した。これらの分離株について、6種の薬剤ペーパーディスク(テイコプラニン、アンピシリン・スルバクタム10/10、アミカシン、レボフラキサシン、イミペネム、クラリスロマイシン)を用いて薬剤感受性試験を実施した。その結果、1つ以上の薬剤に耐性のある分離株は38検体(79%)、2つ以上の薬剤に耐性のあるのは21検体(44%)という結果となった。アンピシリン・スルバクタム耐性(29検体)が最も多く、次にクラリスロマイシン(23検体)への耐性が検出された。その他の薬剤に対しては検出率が10%以下であった。 2)河川・湖沼における薬剤耐性菌の分布 14のサンプリングポイント全てで、薬剤耐性分離株が検出された。試験薬剤が6種類と限定しているにもかかわらず、広く薬剤耐性菌が環境中に分布していることが明らかとなった。 今年度はフィールドにおける薬剤耐性菌の調査を実施し、予想以上に広く薬剤耐性菌が環境中に分布していることが明らかとなった。現在、これらの水試料を用いてメタゲノム解析を実施し、微生物生態系への薬剤耐性の影響について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で示した1年目の研究目標である河川・湖水における耐性菌分布調査は順調に進んだ。16SrDNAによる細菌の同定も順調に進んでいる
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Strategy for Future Research Activity |
申請時には、耐性菌の分布調査と共に水質調査も予定していた。これは、耐性菌が検出された水試料について、耐性を示した薬剤分析について外部委託する予定であった。しかし、分析費用が予定していたよりも高額となり、今年度は実施できなかった。今後は、水試料の分析について薬剤を絞るか、分析試験数を絞るかなど検討する。 それ以外の研究内容については、計画書どおり進められる。次年度は耐性菌の薬剤耐性遺伝子の検出と細菌叢の変化について、DNAの解析を中心に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
フィールドから採取した水試料について水質調査を実施するための費用をとっておいたが、実際には次年度使用額相当の25万円で薬剤分析をしてくれる外部委託先は見つからなかったためである。実際には、その4倍くらいの費用が必要だとの見積であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の費用と合わせて、実施できるか検討することとした。
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