2018 Fiscal Year Research-status Report
Study of relationship between biodegradability and chemical structure of aliphatic polyester
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16K00607
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
橘 熊野 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (60504024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粕谷 健一 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (60301751)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生分解性高分子 / ポリエステル / 微生物 / 環境分解 / 高分子合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境中に流出するプラスチック汚染の対策として、環境中の微生物によって水と二酸化炭素に分解される生分解性高分子への期待が高まっている。多くの研究者の研究成果から、「脂肪族ポリエステルは環境分解性を有している」ということが一般的な事実として受け入れられつつある。しかしながら、全ての脂肪族ポリエステルが容易に環境分解をすることはないという事実も判明している。本研究では、脂肪族ポリエステルの系統的な合成と、その環境分解性評価を詳細に行うことで、新規生分解性ポリエステルを分子設計する上での指針となる脂肪族ポリエステルの「生分解性と一次構造(化学構造)相関」を明らかにすることを目的とする。 昨年度までに、ジカルボン酸の脂肪族鎖長(メチレン鎖の長さ)によって環境分解性が異なり、長鎖ジカルボン酸(メチレン鎖が10以上)では生分解性が著しく低下することを明らかにした。本年度は、新たな生分解性高分子のユニットとしての脂環式ユニットを主鎖骨格へ導入した新規ポリエステルを合成し、その環境分解性評価を行った。その結果、これまで環境での生分解性を有しないと考えられていた脂環式ユニットをポリマー中に導入した場合でも、精緻な分子設計をすれば環境中で生分解性を示すことを明らかにした。生分解性高分子の研究領域において新たな生分解性ユニットの発見は、既存生分解性高分子の物性向上にも繋がることであり、本研究成果は生分解性高分子の普及を推進するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脂環式ユニットを主鎖骨格に有するポリエステルを分子設計の後に合成し、その生分解性と物性を評価した。その結果、導入した脂環式ユニットの化学構造によって合成したポリエステルの環境分解性が異なることを明らかにした。以上のことは、脂環式ユニット含有ポリエステルの合成と基礎的な生分解性評価を行えており、これは、脂環式ユニット含有ポリエステルの「生分解性と一次構造(化学構造)相関」の一端を明らかにしたことを意味している。 一方、昨今の生分解性高分子に対する期待の高まりから、研究室で保有している生分解性評価装置の稼働率が高く、本研究課題で必要とするするだけの生分解性評価を完遂することができなかった。この点で本研究課題の進捗状況としてやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
生分解性高分子への期待が急速に高まっているが、現在市販されている生分解性高分子の化学構造が限定されており、いずれも汎用プラスチックの代替として利用するには物理的特性が不足している。これを解決する方法として新たな生分解性ユニットを導入して生分解性を保ちながら物理的特性を改善することを提案している。 本研究課題で、新たな生分解性高分子のユニットを開発することに成功した。一方で、どこでも生分解性を示すかは未確定であり、より詳細な環境分解性を評価することが今後必要となる。そこで、2019年度は脂環式ポリエステルの環境分解性に関する評価として、微生物産生菌体外酵素による分解性評価、生物化学的酸素要求量(BOD)による生分解性評価を実施し、環境中での生分解性評価を完遂する。その結果をもとに新たに分子設計を行い、力学的特性と生分解性を両立した生分解性高分子を合成し、その生分解性を評価することで、「生分解性と一次構造(化学構造)相関」解明を社会実装へとつなげる。
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Causes of Carryover |
昨年度までの成果から、生分解性を評価すべき高分子の種類が当初予定よりも大幅に増えた。一方で、一昨年あたりから生分解性材料に関する期待が高まっており、研究室の生分解性評価装置を本研究課題で専有することが困難になっている。以上のことから研究期間を延長し、新たに見出した生分解性ユニットの生分解性評価を2019年度に行い研究計画を完遂する。そのために、2018年度に執行しなかった残額を用いて必要な生分解性高分子の合成と生分解性評価を行うものである。
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