2017 Fiscal Year Research-status Report
有機溶液中クリティカルメタルの分離回収における親水性高分子配位子導入樹脂の有用性
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16K00611
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
加賀谷 重浩 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (50272894)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境技術 / 環境材料 / 廃棄物再資源化 |
Outline of Annual Research Achievements |
懸濁重合法により調製した親水性メタクリレート樹脂を基材とし,分子量146,約600,約10000のポリエチレンイミンを導入した。また,ポリエチレンイミンを導入した後,エピクロロヒドリンを介してポリエチレンイミンを再導入し,これを最大5回繰り返した樹脂も調製した。これらの樹脂の元素分析結果より,窒素含有量は,導入するポリエチレンイミンの分子量が大きいほど大きくなる傾向にあり,また導入回数の増加とともに増大することが明らかとなった。 ポリエチレンイミン樹脂のアミノ基をチオアミド化,ホスホメチル化,カルボキシメチル化,アセチル化した修飾樹脂をそれぞれ調製した。チオアミド化樹脂においては,元素分析装置の不調により硫黄含有量を求めることができず,以後の検討を断念した。 各樹脂を固相抽出カートリッジに充填し,21種の元素を含む水溶液を用いた流通式実験により各樹脂の元素捕捉の基本能力を確認した。ポリエチレンイミンを複数回導入した樹脂は,他の樹脂に比べ元素捕捉迅速性に劣ることが明らかとなったため,以後の検討を行わないことにした。また回分式実験を通じて各樹脂のパラジウム捕捉について検討したところ,捕捉量は,未修飾 > カルボキシメチル化・ホスホメチル化 > アセチル化の順に小さくなること,またポリエチレンイミン分子量により大きな影響を受けないこと,が明らかとなった。 これらの樹脂の水保持能力について検討したところ,各樹脂はいずれも60%前後の含水率を示し,大差は見られなかった。そこで,疎水性スチレン樹脂を基材とする複数のイオン交換樹脂,親水性メタクリレート樹脂を基材とする複数のイミノ二酢酸樹脂についても同様の検討を行ったところ,前者は43~47%,後者は69%の含水率を示した。このことから,樹脂の含水率は基材の種類により大きく影響を受けることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した,チオアミド化ポリエチレンイミン樹脂を用いた検討については元素分析装置の不調により断念したものの,代わりにアセチル化ポリエチレンイミン樹脂を検討に加えており,それ以外については平成29年度の研究実施計画におおむね従い研究が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
各樹脂の有機溶液からのパラジウム補足について,保持水量の影響,保持水のpH,塩添加などの効果を検証する。また,実際の有機合成工程において触媒として用いられているパラジウム触媒を用いた分離回収実験も行う。なお,検討に用いる有機溶媒は,酢酸パラジウムの溶解が容易なキシレンとする。そのため,当初予定していた流通式操作による実験は,作業環境と安全との観点から行わないこととする。 また,水溶液,有機溶液からの各種検討結果を踏まえ,疎水性有機溶媒からなる有機溶液に水のみを添加し元素の分配,回収率を調べる。得られた結果に基づき,水の保持により分離回収が改善される機構を液-液抽出における平衡論を参考に考察する。
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