2016 Fiscal Year Research-status Report
活性バイオマンガン酸化物を用いた多元素リサイクルシステムの構築
Project/Area Number |
16K00615
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
谷 幸則 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (10285190)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マンガン酸化真菌 / レアメタル回収 |
Outline of Annual Research Achievements |
対象としたMn(Ⅱ)酸化真菌10株は、いずれも静岡県の河川床石の酸化被膜から単離したものであり、Pleosporales目が5株(KK1-1株、KK1-2株、KK1-3株、KK1-6株とKK1-8株)、Hypocreales目が3株(KK1-4株、KK1-5株とKK1-9株)、Phyllachorales目が1株(KK1-7株)およびDiaporthales目が1株(KK1-10株)である。これらの真菌10株のMn(Ⅱ)酸化開始時間およびMn(Ⅱ)酸化速度は株ごとに異なり、Mn(Ⅱ)酸化のpH依存性は多様であることが示された。各株のMn(Ⅱ)酸化開始時間とMn(Ⅱ)酸化速度に必ずしも相関はみられなかったが、真菌目別におおよその傾向が確認できた。Hypocreales目に属する菌株は、その他の真菌目に属する菌株よりも酸化開始時間が短く、中性側では酸化速度が特に速いものの、酸性側では酸化速度が著しく低下する傾向がみられた。一方、Pleosporales目に属する菌株は、Hypocreales目に属する菌株よりも酸化開始時間が長く、酸化速度も比較的遅いものの、酸性側においても中性側においても一定以上の酸化速度を示す傾向がみられた。どちらの真菌目においても、酸性側よりも中性側で顕著に生育するという報告例や、酸性側においてはMn(Ⅱ)酸化活性がない、あるいは菌体を形成できない菌株も確認されている。これに対し、本研究では中性側よりも酸性側で高いMn(Ⅱ)酸化活性を示すものや、中性側で特に高いMn(Ⅱ)酸化活性を示すものなど、様々な特性を持つ菌株が得られた。このことから、対象とする排水のpHによってこれらの菌株を使い分けることにより、様々な液性の排水からのレアメタル回収に応用できる可能性が示された。特に、酸性側においてはKK1-2株が最も高いMn(Ⅱ)酸化活性を示したことから、従来のMn酸化真菌株では難しいとされてきた酸性側の排水への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単離したMn酸化真菌のマンガン酸化物形成におけるpH依存性の多様性が判明した。特にPleosporales目KK1-2株において、弱酸性条件で強いマンガン酸化物形成能を有することが見出され、従来から研究を行ってきたAcremonium strictm KR21-2の至適pH(pH = 7.0)では、マンガン酸化物形成が認められないpH 5.5においてもバイオマンガン酸化物の形成が認められた。本研究の目的である排水からのレアメタル回収に対して、幅広い条件でマンガン酸化真菌を利用できることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Acremonium strictm KR21-2について、希土類元素イオンやアルカリ土類金属イオンのバイオマンガン酸化物形成に与える影響、また、レアメタル回収率に与える影響を調べ、多元素を含有した排水においてのバイオマンガン酸化物のレアメタル回収特性を調べる。それとともに、弱酸性領域におけるPleosporales KK1-2株の産生した活性バイオマンガン酸化物について、レアメタルの回収効率を調べる。
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