2017 Fiscal Year Research-status Report
活性バイオマンガン酸化物を用いた多元素リサイクルシステムの構築
Project/Area Number |
16K00615
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
谷 幸則 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10285190)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | マンガン酸化真菌 / レアメタル |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類元素(REEs)は様々な産業を支える重要な元素群である。本年度は、河川床から単離したMn(II)酸化真菌Acremonium strictum KR21-2の酵素反応によるバイオジェニックマンガン酸化物(BMO)の形成過程を利用し、水溶液から高い効率でREE3+を除去・回収することを主目的とし、収着媒体としてBMO相を連続的に形成しながら希土類元素イオン(REE3+)を連続的に収着するプロセスの詳細を検討した。 BMO形成過程におけるREE3+収着効率を比較したところ、Mn2+共存下で、新規形成BMOの各REE3+に対する積算収着率は51-84%であった。一方、NaN3処理のBMO(酵素失活)の各REE3+に対する積算収着率は18-19%であり、BMOの連続形成によって、高いREE3+の連続回収が可能であることが示された。REEs3+によるBMOのMn(II)酸化能への影響を調べたところ、REE3+共存下において、Mn(II)酸化の積算酸化率は平均89.6%であり、REE3+を添加しない系(56.8%)に比較して有意に高いことが示された。新規形成したBMOのMn(II)酸化に対して共存La3+濃度の影響を調べた結果、La3+が0.05 mM以上で共存する場合には、BMOによるMn2+の積算酸化率が90%以上高く維持されることが明らかとなった。また、共存La3+の有無により、形成したBMOに対する飽和吸着La/固体相Mnのモル比に大きな差が見られ、共存La3+濃度の増加とともに高くなる傾向(最大で0.33)にあった。 本研究により、真菌が形成したMn(II)酸化酵素を持つBMOを利用して、REEs3+の連続収着プロセス(収着媒体となりうるBMO相の連続形成とMn2+による吸着競合の低減、REEs3+共存による高い酸化効率の維持と構造特性)の詳細を明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レアメタルの一群である希土類元素イオン(REE3+)の存在下において、Mn(II)酸化真菌Acremonium strictum KR21-2が形成したBMOによる連続的なMn(II)酸化作用が連続的に継続し、それを吸着媒体とすることで、REE3+の連続回収が可能であることが示された。また、NaN3の添加によってMn(II)酵素活性を失活させた場合、共添加されたMn2+は、La3+の吸着を大きく阻害することが明らかとなり、BMOのMn(II)酸化酵素活性は、共存Mn2+からの競合吸着を避けるためにも非常に重要であり、Mn(II)酵素活性を持たない化学合成されたマンガン酸化物にはない活性BMOの特徴的な機能を有することが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
希土類元素イオン共存下において、BMOのMn(II)酸化効率が高まることや形成されるBMO固体相の結晶構造が変化することが新しい知見として認められた。このように共存イオン(ここでは、REE3+)によって、連測形成されるBMOの結晶構造変化が、共存イオンの吸着効率に大きく影響を与えている可能性が示唆された。共存REE3+やアルカリ土類金属イオンによるBMO構造変化に注目して、BMO連続形成におけるレアメタル回収効率に与える諸条件を検討する。
|