2016 Fiscal Year Research-status Report
液液界面反応を利用した金属リサイクル技術の開発と中空ナノ粒子構造体の創製
Project/Area Number |
16K00619
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
下条 晃司郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (50414587)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 廃棄物再資源化 / 抽出分離 / エマルション / 物質徐放 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では産業廃棄物から有価金属である金をリサイクルし、環境保全および資源の有効利用を目指すと共に、回収した金をナノマテリアルとして期待されている中空ナノ粒子として資源化することを目的としている。 初年度は、金イオンAu(III)に選択性を示す抽出剤を新たに合成し、液液抽出実験によるAu(III)の抽出分離を検討した。具体的には、抽出剤としてジグリコールアミド酸型酸性抽出剤N,N-dioctyldiglycolamic acid (DODGAA)、ジチオグリコールアミド酸型酸性抽出剤N,N-dioctylthiodiglycolamic acid (DOTDGAA)、リン酸化アミド型酸性抽出剤(2-(dioctylamino)-2-oxoethoxy)methylphosphonate (DOAOBPA)、ジアミド型酸性抽出剤tetra(n-octyl)nitriloacetic acid diacetoamide (TONTADA)、ジグリコールアミド型中性抽出剤N,N,N',N'-tetra(n-octyl)diglycolamide (TODGA)の計5種を用いたところ、次のような抽出挙動が観測された。 1. DODGAAはAu(III)を最大で50%程度しか抽出できないが、エーテル酸素を硫黄に置換したDOTDGAAはソフトドナー性によりAu(III)との相互作用が強くなり、Au(III)を定量的に抽出することが可能となった。 2. DOAOBPA、TONTADA、TODGAは水相の酸性度が高いほどAu(III)の抽出率が増加し、定量的な抽出が可能であった。特にTONTADAはAu(III)に対して極めて高い抽出能を示した。一方、DOAOBPAおよびTODGAは他の白金族系金属に比較して高いAu(III)選択性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はAu(III)に対して高い抽出能および選択性を有する数種類の抽出剤の開発に成功した。研究計画時に提案した研究項目について、おおよそ計画どおりに研究が遂行できており、ほぼ目標が達成された。次年度は水/有機溶媒/水の三相からなる乳化液膜(W/O/Wエマルション)を調製し、Au(III)の抽出分離を行うとともに、内水相/有機相の液液界面を反応場として還元を行い、抽出したAu(III)から空洞を有する中空金ナノ粒子を合成する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、まず、新たに開発した抽出剤と界面活性剤を用いて安定なW/O/Wエマルションの調製を行う。さらに金メッキ模擬廃液を用いたAu(III)の選択的抽出を行い、速度論的に抽出分離挙動を解析する。水相の液性(pH、緩衝剤など)、抽出剤および界面活性剤の種類、抽出剤および界面活性剤濃度、有機相と水相の体積比などの実験条件を変化させて、W/O/Wエマルションの安定性とAu(III)の抽出分離挙動が最適となる条件を明らかにする。 次に、内水相に還元剤を加えた条件で、W/O/WエマルションにAu(III)を選択的に抽出し、抽出されたAu(III)を内水相/有機相界面で還元することで中空金ナノ粒子の合成を行う。また、還元剤の種類や濃度を適宜変えることで、液液界面における還元効率と金殻の成長速度を調節する。さらに、内水相の体積やAu(III)を調整することで中空金ナノ粒子の粒子径や膜厚などの構造制御を検討する。
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Research Products
(10 results)